想いをつなげる
「ミックススパイスには、ワクワクするようなおいしさがあります」というのは、鎌倉を拠点にスパイスの魅力を伝えるメタ・バラッツさんです。
バラッツさんは、日本で生まれ、世界で学び、父や祖父からインド料理などについて教わるなど、幅広い知識とキャリアをもちます。そのスパイスは、古くから受け継がれる伝統的な配合に、独自のアクセントや発想も加えた味わい。一振りから食材の持ち味を引き出し、お料理をぐんとおいしくしてくれます。
使い方次第で、新しい味わいと出会うよろこびもあるスパイスの世界。今回は、鎌倉にある店舗兼スペースを訪ね、スパイスのプロフェッショナルであるバラッツさんから見た、ミックススパイスの魅力や基本的な使い方、そしてたのしみ方などについて伺いました。
INTERVIEW
スパイスは“わが家の香り”がある身近なもの
気軽に使えるミックススパイスも手掛けるバラッツさんのもとには、スパイスに関する悩みも寄せられます。
「スパイスの魅力といえば、やはり香り。料理の幅が広がりますし、嗅ぐと、懐かしくなったり、その国の料理をつくりたくなったり、旅に出たくなったり。食欲や好奇心を刺激されます。何より、いい香りがするものはおいしい!
一方で、中には(スパイスが)使いこなせない。なかなか使いきれないという方もいらっしゃいます。難しく考えなくて大丈夫。日本の伝統調味料のごま塩や七味唐辛子もミックススパイスですし、世界中で最もメジャーなものといえばカレー粉。どれも“わが家の香り”がある、身近なものですよね。それぞれの家庭のスパイス使いが代々受け継がれてきた、キッチンの歴史が培ったものがミックススパイスともいえます」
料理をたのしくラクにしてくれる
バラッツさんいわく、ミックススパイスは複数の香りを重ねるので、一種類のスパイスでは表せない深みが増すのも魅力です。また、一本あればスパイスをいくつもそろえる必要がなく、塩や砂糖などの調味料が加わったものなら、それだけで味が決まるのも便利なところ。「これさえあれば必ずおいしくなる」と、料理の腕にも自信がつきます。さらに、一本で様々な使い方ができるのも、ミックススパイスのたのしさです。
「お肉に擦り込んで焼いたり、炒ったナッツにオイルと一緒にまとわせてスナックにしたり、シンプルにローストした野菜にかけたり、煮込んだ料理の仕上げに振りかけたり。気軽なレシピからじっくり丁寧につくる料理まで、幅広く使えるのもミックススパイスならでは。まずは『おいしい』と感じる一本を見つけて、毎日の食卓でどんどん使ってみてください」
HOW TO ENJOY?
スパイスのきほん
まずは、きほんの「き」。スパイスを扱ううえで、心がけたいことや気になることを、バラッツさんに教えていただきました。
使う量
スパイスは、加え過ぎると、独特の苦味や辛味が立ち過ぎることも。一般的なレシピは、小さじ1から計算されているものがほとんど。使う量に迷った場合は、小さじ1から少しずつ増やしたり減らしたりしてみましょう。とくに辛くなり過ぎると調整が難しいので、カイエンペッパーの入れ過ぎにはご注意。
使い切る目安
開封後はなるべく早くが鉄則。2〜3ヶ月を目安に使い切ると、おいしさを保ちやすくなります。保存する場所は、常温の、直射日光が当たらない場所がおすすめ。冷蔵庫や冷凍庫に入れると、出し入れで結露が起こり、風味が落ちやすくなります。
スパイスの魅力を引き出す方法
スパイスの香りを立たせるのは、熱と油(油分)です。ただし熱した油に加える場合は、あまり高温だと焦げ付いてしまうので、注意してください。加熱調理をしない場合、たとえばサラダやカルパッチョなどに使う場合は、オリーブオイルなどそのままかけておいしいオイルと一緒に振りかけましょう。また、チーズやナッツ類など、油分のある食材に振りかけても、スパイスの風味を感じられますよ。
パウダーとホールの違い
その名の通り「粉(パウダー)」と「実(ホール)」です。パッと風味を加えたい、仕上げに使う場合は、パウダーが手軽で便利。より風味を強く出したい場合や、しっかり煮込みたいなら、ホールがよいでしょう。ホールを初めて使うなら、身近なブラックペッパーや、カレーなどによく使われるクミンがおすすめ。特別な道具がなくても、手指などで潰すだけで、よい香りが出ます。
ようこそ! ミックススパイスの世界へ
きほんを知ったところで、まずはスパイスのたのしさを感じられるミックススパイスから始めてみませんか。ここからは、食卓に欠かせない「この一本」と出会うコツを、バラッツさんに聞きました。
調味料いらずの一本から始める
そもそもスパイスは香りのもので、それ自体に味はありません。だから、味が足らず、かけ過ぎると、辛みや苦味が強くなります。調味料がブレンドされたミックススパイスなら一本で風味が決まり、スパイス初心者にはとくにおすすめ。
温かいシンプルな食材と食べる
気になった一本を手にしたものの、用途に迷うなら、蒸したジャガイモやグリルチキンなど、温かいシンプルな食材に合わせてみましょう。スパイスは、熱に触れると香りが立ちます。この時、オイルもかけると、もっとおいしくなります。
シチュエーションや食べたいもので選ぶ
一本に決められないなら「BBQ」や「白ワインと合わせる」など、シーンや食材とのペアリングから選んでみても。スパイスをおいしく使い切る目安は、開封後2〜3ヶ月なので、なるべく身近な食卓からイメージするとよいでしょう。
バラッツさんのおすすめ
- 「ラブスパイス」シリーズ
- アメリカなどでしたしまれるBBQシーズニングソルトから発想したシリーズです。使い方は、その名の通り「Rub(擦り込む)」だけ。「最初から塩も砂糖も入っているので、味を調整しなくてもOK。好きな食材に振りかけたりマリネしたり、いろいろ使ってみてください」。
- ※現在は、販売終了しております。
- 「マサラソルト」シリーズ
- ステーキやサラダなど、それぞれの料理に振りかけるだけで風味が決まる、便利なシーズニングソルトです。「煮込みなど手の込んだ料理に応用してもいいですが、ピザやフレンチフライなどにかけるだけでもたのしめます。全種類そろえていただきたいほど便利」。
- 左から
- ハーブマサラソルト / カルダモン マサラソルト
- ステーキマサラソルト / チャット マサラソルト
- メタ・バラッツ|BHAEAT MEHTA
- 1984年、神奈川県鎌倉生まれ。南インドの高校を卒業後、スイス、スペインにて学び、帰国。スパイス専門社「アナン株式会社」3代目として、鎌倉・極楽寺の古民家でスパイスやカレーを販売する傍ら、料理教室やワークショップも開催する。「東京スパイス番長」の一員で、DEAN & DELUCAのスパイス開発にも深く携わる。
マサラソルトを使いこなす
-
- レシピ|チャナチャート
-
これさえあれば、手軽におつまみができる かけるだけでおいしい1本
ポクポクとしたひよこ豆をたっぷりいただける、甘酸っぱいあえ物「チャナチャート」。おいしさの要は、「チャート」というミックススパイスを振りかけること。甘みと酸味のあるジューシーな果物をプラスするとさらに、スパイスの香りが広がります。
-
- レシピ|オレンジスイートポテト
-
はちみつを絡めたサツマイモと、オレンジを重ねてオーブンで
焼きあげる手軽な一皿。仕上げに、甘みと爽やかなカルダモンの香りに、
ほんのり感じられる塩気がちょうどいい、デザート感覚の一皿に。