サイトヘッダー

people想いをつなげる

旅して広がる食の世界vol.2『クリエイティブディレクター Max Houtzager氏』

2025.04.03
旅して広がる食の世界vol.2『Massif  マックス・ハウゼガ氏』

食を通して、心と体を満たし、新たな価値観に出会う旅を。

池尻大橋の「Massif」は世界各国のナチュラルワインをはじめ、厳選されたワインを1000本以上常備するレストラン。様々なルーツを持つシェフが手掛ける国産食材にこだわったワインに合う料理を堪能でき、カフェやバー利用など一日を通して訪れることのできるコミュニティとなっています。

「Massif」のクリエイティブディレクターであり写真家でもあるMaxさんに、食と旅についてお話をお伺いしました。

Interview

アウトドアと食は根底で繋がっている

  • マックス・ハウゼガさん
  • マックス・ハウゼガさん
  • マックス・ハウゼガさん
ご自身の活動と食がリンクするようになった理由はどこにあると感じていますか?
ベースにあるのは、私が北カリフォルニアで育ったことだと思っています。サーフィンや山遊びの環境に恵まれていただけでなく、身近に良質な食材があり、それを上手く調理するシェフとレストランがたくさんあった。仲間とのアクティビティを記録する写真も、仲間と一緒に素晴らしい時間を過ごすための食事も、異なる媒体ではありますが、どちらも自然との繋がりを感じるという部分では等しいものだと思っています。
では、写真家としてキャリアを積んでいく過程で、食に携わる活動を始めたのはごく自然なことだったんですね。
そうですね。ただ、そこに理由を求めたことはありません。僕にとってアウトドアと食は深いところで繋がっているものなので。

  • ヤシの木の影
  • 車から見える海の様子
カリフォルニアと日本を拠点とするMaxさんに伺いたいのですが、食文化の違いをどのように捉えていますか?
端的にいえば、カリフォルニアは多様性があり、表現が自由。その一方で、日本は文化や作法を重んじるため、伝統的で繊細だと思います。しかし、カリフォルニアは日本のそういった考え方や味に憧れを抱いているのと同様に、日本もカリフォルニアの柔軟な考え方や味に興味を抱いているのが面白いところですね。2つの異なる文化が混ざり合うことで生まれるシナジーに、私も期待しています。
新たなプロジェクトに挑む際、なにか意識していることはありますか?
私は、昔から自分のことをゼネラリストだと思っています。つまり、空間の雰囲気や関わってくれている人の表情、形成されるコミュニティ像を全体として把握し、ミックスさせることが大切。そうすることで、既存の文化を守りながら、新たな表現ができるのではと考えています。

Overview Coffee
次に、「Massif」を手がけるようになった経緯をお聞きしたいです。

池尻大橋にある大橋会館という築50年の建物がリニューアルされることになって、1階で飲食店をやりませんかというオファーをいただきました。日本橋で立ち上げたベーカリーカフェ「Parklet」がにぎやかなコミュニティースポットになっていて、そのようなお店をつくってほしいというリクエストでした。実は、私は日本にきてからずっと大橋会館の近くに住んでいて、隣の銭湯も通っていたんです。物件の雰囲気や建物の歴史と立地から、面白くなりそうだなと思い、オファーを快諾しました。

Massif
「Massif」のコンセプトはなんでしょうか。

Massifは和訳すると「山塊」という意味ですが、ワインの土壌などを表す用語で、山脈の中でつながっている山々のことです。お店はワインを軸にしている部分があるので、ワインにまつわる言葉を考えました。お店の中央にある建物を支えている大きなコンクリートの三角形の柱は山を思わせるような形にし、柱の東側をレストランスペースに、西側をカフェとバーにしました。

時間や季節によってもそれぞれの趣きが変わり、小さい空間の中で違う要素がありながら共通部分もあり、一体となっています。ワインも色々なレベルのものが置けるお店になりますし、カフェ利用やレストラン利用の様々なお客さまが訪れ、チームも色々な人が集まる。多面的な場所になりますが、皆が一緒になり何かを共感できる場をつくりたと思いました。もっというと、山塊はよく周辺の地方に気象的に影響があるので、目黒区東山の商店街の中で奥の角に位置するMassifが、周辺の東京のコミュニティーやカルチャーにもちょっといい影響を生み出せれば良いなと思っています。

Overview Coffee
家具やインテリアも独創的ですが、特にこだわったポイントは何でしょうか。

全体のアプローチに対してに言えるのは、お店がある池尻大橋にできるだけ近い人たちと一緒につくることと、近いマテリアルや食材を使うということです。そうでないと場所に馴染まないと思いますし、世界中は地球のどこでも同じになってしまう。一緒に作った建築家もグラフィックデザイナーも歩ける距離にいて、チームの皆も東京とご縁がある人たち。石のカフェテーブルは神奈川県真鶴で採掘される小松石で、レストランのテーブルは東京の土を使い左官職人がつくったものです。食材はもちろん可能な限り近いところから仕入れます。そうすることで、昔からここにあるような世界観や味になりつつ、新しさもほどよく出てくると考えていまます。

  • Massifの料理
  • Massifの厨房
料理についてはいかがでしょうか。食材のアップサイクルにも取り組まれているそうですね。
お店のコンセプトに戻りますが、東京でバーとレストラン、カフェが一つの店に入っているのは少し珍しいと思います。オープンな雰囲気で様々なたのしみ方ができるだけではなく、チーム内の知識交換や食材の活用もしやすい。バリスタとシェフが話すと新しいコーヒーを使ったデザートができたり、キッチンから出てくる余剰品や発酵食品を使ったシロップもカフェや夜のノンアルコールドリンクになります。わかりやすい例としては、生産者から柑橘が届くと、果実や皮、ゼスト、皮から取ったオイルを使って料理、ペイストリー、カクテルやノンアルコールドリンクにするなど。他にも、抽出後のお茶の葉を活用するなど、様々なアイデア交換と食材の循環ができます。
Overview Coffee
他にも、クリエイティブディレクションを手がけた、千葉県一宮の「Overview Coffee」も環境と生態系に配慮したコーヒーロースターですね。「Overview Coffee」での地域とのつながりについても教えてください。

一宮は昔からサーファーが多いエリアで千葉海岸沿いの中で比較的メインとなる場所ですが、人が集まる場所があまりない印象でしたので、生産者や面白いことをやっている人たちのハブとなるような場所をつくろうと思いました。自然に近い場所で生産者とつながりやすいので、農家さんはもちろん、牧場から、ピーナツバターを作っている友人もすぐに会えて直接仕入れられます。お店のすぐ外でコンポストにも取り組んでいます。

料理や特別な飲み物のイベントも定期的に実施していますが、地域の生産者も呼んで、ローカルも外から遊びにきた方々も混ざりあって、千葉の自然と食をたのしめる場になっています。

Overview Coffee
「Overview Coffee」も「Massif」も、地域と来訪者に開かれたコミュニティになっているのですね。食について最後の質問ですが、Maxさんにとって食とは何でしょうか?
私にとって食は様々な意味合いがあります。栄養にもなれば刺激にもなり、またコミュニケーションの媒体だったり。食に求める要素は人やタイミングによっても様々だと思うので、多様に魅力を感じてもらえるようなダイナミックさを入れ込むことを大事にしています。

旅は人生に変化をもたらしてくれる

  • マックス・ハウゼガさん
  • マックス・ハウゼガさん
Maxさんにとっての旅の必需品はなんですか?
カメラは当然として、いろんな旅に出るのが好きなのでそれ以外は特に決めていません。例えば、スノーボードの旅に出たとしても、いい波があることを予想してウェットスーツを持っていったり、軽い旅ではカメラと着替えのTシャツ1枚しか持って行かなかったり。写真の仕事で出張に出るときも、スピアフィッシングができる場所だったら素潜り道具を持っていくように、タイミングや場所、季節によって持っていくものを順応させています。
Overview Coffee
次はどんな旅に出る予定か教えてください。
基本的にカリフォルニアにはよく行くのですが、次はサンフランシスコに「Overview Coffee」の店舗を作りに行く旅になると思います。その流れで、コーヒー豆の産地に赴く旅にも出たい。できればサーフィンもしたいから、中南米がいいかなと思っています。
マックス・ハウゼガさん
Maxさんにとって旅とは何ですか?
変化を与えてくれるもの。私にとって一番怖いのは、慣れなんです。旅は、物理的に動きがあるだけでなく、変化を体験することで、刺激が生まれ、その先に影響を及ぼす。つまり、旅に出るという時点ですでに変化が生まれているのです。

自分自身の表現を控えることはしたくない

マックス・ハウゼガさん
次なる目標はありますか?

「Massif」の2店舗目として「Mini Massif」をオープンさせることです。その名の通り、「Massif」の小さいバージョンで、二子玉川にある髙島屋のフードコートに出来る予定です。私は、目的に向かって進むというよりは有機的に生きています。定められたラインに乗るのではなく、目の前に広がる自然地形に従って生きているような。

そもそも、レストランを作ることなんて想像もしていませんでしたが、その機会に遭遇し、やるべきことだと感じたんです。今後も、新しい視点を持ち続け、様々なコミュニティが混ざり合うことで生まれる文化を、クリエイトし続けていきたいです。

最後に、Maxさんのポリシーを教えてください。

遠慮せず、自分の表現に100%魂を注ぐこと。それは、全力でやるという意味でもベストを尽くすという意味でもなく、自分を控えることはしたくない、ということです。

ケイティ・コールさん
マックス・ハウゼガ|Max Houtzager
東京を拠点とするクリエイティブディレクターにして写真家。北カリフォルニアで育ち、幼少期から続けているサーフィン・スノーボード・マウンテンバイク等アウトドアライフを根底に、写真・動画制作に勤しむ。また、池尻大橋の「Massif(マッシーフ)」や日本の「Overview Coffee(オーバービュー コーヒー)」を始めとするプロジェクトを通して、空間・味・コミュニティを一体化させることを目指して活動している。
食との出会いを広げる旅のバッグ
<2025年4月15日(火)発売>食との出会いを広げる旅のバッグ
”食を巡る旅”をテーマに、卓越した機能美を持つラゲッジブランド『BRIEFING』との新たなコラボレーションアイテムが生まれました。
Maxさんと「LOCALE」のシェフ・オーナーのKatyさんの二人と共に、旅のアイテムをご紹介します。
関連タグ