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people想いをつなげる

つづく毎日によろこびを『HAyU 小川 学氏』

2023.10.25
つづく毎日によろこびを

DEAN & DELUCAが日本に初出店してから、2023年6月で20周年。アニバーサリーイヤーを、より一層、お客さまにおたのしみいただきたい。そう考えていた私たちは、『HAyU(ハユ)』小川 学さんのワイヤーアートに出会いました。

小川さんは、アニマルヘッドをはじめとするオリジナル作品から、企業やブランドとのコラボレーション、ワイヤーアートを生かしたテキスタイルなど。「飾る人が変化できるアート 」をコンセプトに、見る角度、飾る場所、時間帯などで、多彩なとらえ方ができる作品を生み出しています。

ワイヤーアート
使用している針金は見た目以上に硬い。「どうしても負担がかかるので、やはり手は大事です」。

その作品を目の当たりにすると、DEAN & DELUCAが伝え続けている“食するよろこび”と、小川さんの手がける“アート”。一見、遠い世界のようですが、人のこころを動かすものは人の手から生まれる。つまり、人の手から生まれるものには人のこころを動かす力がある、と感じさせられます。

今回ご縁がつながり、このホリデーシーズン、小川さんから素晴らしいアートを寄せていただきました。ここからは、小川さんに伺った、ものづくりに込める想いをお届けします。


INTERVIEW

HAyU 小川 学さん

 


小川 学さん
陽光が注ぎ、風が通り抜けてゆくアトリエで手を動かす小川 学さん。

広い空となだらかな山並みをのぞむ『HAyU』のアトリエ。リビングから続くこの場所で、壁一面に飾られた作品に囲まれながら、小川さんは日々創作しています。

都心で美容師をしていた小川さんは、実家が園芸農家だったこともあり、2010年に地元へ帰郷。仏花などを手がける農家として、奥さまと二人で新たな道を歩みはじめました。そうして5年ほど経った2015年、自宅のインテリアになるものをつくろう。せっかくなら子どもがよろこぶものをと、針金でビッグホーンという大きな角をもつ羊の顔をつくります。


  • 制作風景
  • 制作風景
  • 制作風景
  • 制作風景
  • 制作風景

「今思えば、最初から難しいモチーフを選びました(笑)。子どもと毎週のように動物園や水族館に行っていたので、動物をつくったらよろこぶかなと、緑色の園芸用針金でつくってみたのがはじまりです。

僕がつくりはじめた頃、『ワイヤーアート』といえば、石を針金でぐるぐる巻きにしたアクセサリーがあるくらい。最初はその存在自体も知りませんでしたね。

身近にあった素材を使って、家の中で少しずつ手を動かして、いざ完成して飾ったら、子どもの反応がよくって。よろこばれると、やっぱりうれしい。『じゃあ、これは何か分かる?』と、少しずつ動物をつくって増やしていきました。

当時は園芸農家もしていたので、頑張ってつくって、ひと月に一個ぐらい。食卓で作業していたから『ごはんだよ!』って言われたら、ザザーッと片付けて。そうして出来たものをSNSに写真をあげてみたら、友人や知人づたいに『つくってほしい』という人が増えて、少しずつ広がっていったんです」

作業テーブル
作業テーブルには、針金、プライヤー、スケッチブックなどが並ぶ。

余白から生まれる自由

ワイヤー熊
 

「お料理でいえば、僕は野菜をつくっているようなもの。手にした方が自由に料理して、おいしく食べていただければうれしい」と、小川さん。

だからこそ、大事にしていることの一つはインテリアとしてたのしめること。

「ギャラリーアートではなくインテリアアートなのは、僕がもともと、お客さまの日常生活から想像してスタイルを提案する美容師だったからです。ヘアスタイルは、お客さまが自分でスタイリングして初めて完成します。『HAyU』のワイヤーアートも、飾っていただいて初めて完成する余白があるものにしたいと思いながら、いつもつくっています」

ワイヤーバラ
一つひとつは、虫ピンで壁にとめられるぐらい軽い。
「夜の壁に落ちる影も、またいいんですよね」と小川さん。

もう一つ大事なのは、飽きないこと。針金という一本の線から生まれる立体は、正面から、斜めから、真横から、下からなど、見る角度で印象ががらりと変わります。

「インテリアですから、毎日見ても飽きないことも大事。つくっている僕自身も、自分の作品に新しい発見があるんですよ」

 

アトリエの壁面
動物、楽器、人の顔など、ジャンルの異なるモチーフが溶け合い、共存するアトリエの壁面。

さらに出来あがりの塩梅も大事に。“完成”は、手にする人に委ねるようにしています。

「制作中は、自分のイメージにどれだけ近付くかを考えながら手を動かしていますが、つくっている僕が自分で“完成”させると想像がついてしまう。それではおもしろくないんですよね。

動物の頭をつくるのも、手にした方に自由にたのしんでいただきたいからです。全身でつくる場合もありますが、全身は座る、立つなどのポーズが必要になります。するとシーンが決まってきて、他のモチーフと並べるときにどうしても違和感が出ます。頭だけなら、アフリカの動物、猫っていうふうにジャンルでまとめてもいいし、ライオンとギターとか、猫とバラとか、まったく違うモチーフ同士で飾ってもおもしろい。

いまのたのしみは、手にした方がシェアしてくださった『HAyU』の“完成”をSNSで見ること。それぞれの毎日でこんなふうに広がっているのかって。これこそ、僕がいちばんやりたいことなんです」

 

新たな表現との出会いを求めて

ハンドシリーズプロトタイプ
キッチンに飾っている、ソムリエを表現した「ハンドシリーズ」のプロトタイプ。
 

小川さんはホリデーのモチーフをつくるまで、フードは手掛けてこなかったそうです。その理由は、飾る場所。

「ストリートアートのように、その場所だからこそ成立するものが、アートにはあると思うんです。僕は、飾られる場所で、初めて成立するものをつくりたい。だから、ただ単純にフードをつくるのは、ちょっと違うと思っていました。レストランのような、食にまつわる場所に飾るならアリなんですけれど。

だから今回、食を伝えるDEAN & DELUCAから声をかけていただいて、新たな表現が出来るって、ワクワクしました」

  • 壁面
  • 壁面
  • 壁面
  • 壁面
  • 壁面

刺激を受け、こころ踊る一方で、今回の制作は試行錯誤の日々だったと続けます。

「最初につくったのはザクロです。食材の中でも、針金で伝わるもの。そして、DEAN & DELUCAらしいものは何だろうと、一つひとつ考えてゆきました。

食材だけでも、サーモン、アスパラガス、ワイン、ヘクセンハウス……。いろいろつくりましたが、ヘクセンハウスはまずスケッチしました。大きすぎても小さすぎてもつくりにくいので、ほぼ完成サイズ。実際につくるとき、こういう四角いものは少し斜めに下げるように曲げます。真っ直ぐだと、壁に飾ったときに線が見えにくくなるんですよ」

小川さん
食べることが好きだという小川さん。今回のモチーフは約1年かけて制作してくださった。
 

「針金1本で表現することが、難しいものもありました。たとえば、イチゴのつぶつぶとした種。見えづらい色の針金を仕込むなどすれば出来るのかもしれませんが、僕の場合は一色の針金をつなげてゆくので、どうしても難しい。だからショートケーキは苦労しましたね。

あと、ブドウも難しかった。針金一本で立体にすると、よく分からなくなってしまって。ブドウの房ってどうなっているんだろうと観察して、何度かつくり、今の形になりました」

苦心した部分こそあれ、新たな挑戦は小川さんにとってうれしい時間だったとも。手が離れたいまは、お客さまの毎日でホリデーのモチーフが“完成”する姿をたのしみにしているそうです。

キッシュ
新しい試みの一つ。
ワイヤーアートを刺繍に落とし込んだランチョンマットと、九谷焼にプリントしたうつわ。

「やりたいこと、やってみたいことは、まだまだたくさんあります。針金に色をつけたいし、木工製品などほかの立体アートにも挑戦したいし、絵も描いてみたいし、ワイヤーアートを転写したうつわ、ストーリーを持たせたオリジナルグッズなどもつくりたい。

そのためにも試みているのは、『HAyU』のシンボリックなデザインを浸透させること。これがあれば、表現手法が変わっても『HAyU』だと伝わるようなものづくりをしてゆきたいんです。

ワイヤーアートから、どれだけ離れられるか。そして、どこまでワイヤーアートのテイストが残っているか。余白があるものだからこそ、出来ることはまだまだあると思っています」

見る人、手にとる人のつづく毎日に、よろこびを届ける小川さん。その作品と、これからを、どうぞおたのしみに。

 

小川 学|MANABU OGAWA
小川 学|MANABU OGAWA
1976年、茨城県生まれ。東京、横浜で美容師を経て、帰郷して園芸農家となる。2015年、ワイヤーアートの制作を開始。インテリア上のアートとして、ワイヤーアニマルヘッドという独自のスタイルをつくる。2017年「青参道アートフェアー」で作家デビュー。ブランド名を、2人の子どもの頭文字から『HAyU(ハユ)』と名付ける。現在、全国各地で抽選による販売会を開催。創作活動はインテリアアートにとどまらず、ホテルロビーや公共施設のディスプレイ、パブリックアートも手がける。2019年、井上陽水氏のCDジャケットに作品を提供。テキスタイルやグッズのデザインなど、多岐に活動している。 

HOLIDAY2023 ARTWORK BY『HAyU(ハユ)』

  • HOLIDAY2023 HAyU_PACAGED
  • HOLIDAY2023 HAyU_PACAGED02
  • HOLIDAY2023 HAyU_GARANT
  • HOLIDAY2023 HAyU_GARANT02
  • HOLIDAY2023 HAyU_GLASS
  • HOLIDAY2023 HAyU_EXTHBITION
  • HOLIDAY2023 HAyU_EXTHBITION

『HAyU』小川さんにホリデーをイメージした特別につくっていただいたモチーフを盛り込んだパッケージやプロダクト。カフェ丸の内ではギャラリーも開催

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