旬をたのしむ
食するよろこびの一つといえば、その時期の気候に合うものをいただくこと。旬の野菜や果物はもちろん、夏場ならひんやりとした喉越しの麺類が、ますますおいしい。
中でも素麺(そうめん)は、食欲が落ちやすい暑いときにも重宝する食材です。現在では、御中元などのギフトにも重宝される素麺。古くから、7月7日「七夕(たなばた)」の行事食としても親しまれています。
食べられるようになった理由には諸説ありますが、その一つが古代中国にあります。その昔、7月7日に亡くなった帝の子が悪霊になり、熱病を流行らせ、それを鎮めるために好物だった「索餅(さくべい)」というお菓子を供えて祀りました。以来、7月7日に索餅を食べると無病息災で過ごせるとされ、日本には奈良時代ごろに伝わります。
索餅は、唐菓子の一つです。チュロスのような形で、縄状なので「麦縄(むぎなわ)」とも呼ばれます。これが時代を経て、素麺のもととなり、現在では七夕に無病息災を願い素麺を食べるようになったのだとか。
素麺の発祥は、奈良県・三輪(現在の桜井市)の手延べ素麺といわれています。その始まりは、1200年も昔。日本最古の神社とされる三輪山・大神神社で、飢餓と飢饉に苦しむ人々の救済を祈願。神さまからのお告げ通り、肥沃な三輪の地に小麦を播き、実を石臼で粉にひき、湧水で糸状にしました。のちに、お伊勢参りの途中で訪れた人々が、そのおいしさに魅了され、播磨(兵庫県)、小豆島、島原などへと伝わっていきました。
素麺の茹で方と食べ方
やはり麺類をおいしくたのしむには、茹で方が肝心です。素麺の場合は、たっぷりのお湯ですばやく茹で、しっかり洗うのが基本。
-
- 大きな鍋にお湯を沸かす。
- 素麺の束をほどいて入れ、2分ほど茹でる(お好みや麺の形状で茹で時間は調整)。
- 麺が浮き上がってきたら、吹きこぼれないように火力を調整する。
- 麺を2〜3本取り出し、水で冷やして固さを確認する。
- 好みの固さになったらザルなどに上げ、水でよく洗い、水気を切っていただく。
茹で方のコツは、お湯の温度が下がらないよう、吹きこぼれそうになっても水を足さないこと。必ず、火を弱めます。
冷やして食べるなら、調理後すぐがおすすめ。また、食べるまでに少し時間があるなら、乾燥しないように保存用器に入れるなどして冷蔵庫へ入れましょう。食べる前に、冷水をかけて麺をほぐします。煮麺(にゅうめん)でたのしむなら、あらかじめ茹でた麺を、食べる前にお好きな汁で煮込めば完成です。
現在では、日本各地でつくられ、つくり手や土地ごとに形や味わいが異なる、個性豊かな素麺。古くからなじみのある和食材ですが、この夏は改めて注目してみてはいかがですか。