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seasonal旬をたのしむ

テロワールを感じるチーズ

2022.04.11
チーズのイラスト

なぜ、これからの時期がシェーブルチーズの旬かというと、その要であるミルクが最もおいしい時期を迎えるから。春先に出産シーズンを迎える山羊は、初夏にかけて生まれた赤ちゃんにミルクを与えます。青々としげる草花をたくさん食べて、出される栄養たっぷりのミルク。この頃の山羊乳は、最もおいしい時期を迎えます。

このミルクでつくる出来立てのシェーブルチーズは、格別な味わいです。母山羊が食べた草花の風味を感じられ、どこかレアチーズケーキのようなフレッシュさがあります。濃厚だけれど爽やか。そのまま食べるのはもちろん、ベリー系のフルーツジャムや蜂蜜ともよく合います。

風土で育まれた味わい

リトル・グリーク・キッチン
写真提供=Little GREEK Kitchen

山羊乳のチーズがより盛んにつくられ、種類も豊富なのはフランスです。フランスは、同じ国内でも土壌・気候・植生などが実に豊か。温暖な地域もあれば、山々に囲まれた険しいエリアもあります。しかし切り立った崖ももろともしない山羊たちは、それぞれの地域で育つ草花を食べ、たくましく生き、子どもを産み育てます。

ある意味で、ワインのように。気候風土の育んだミルクでつくられるシェーブルチーズは、地域ごとのテロワールを感じられる食材でもあります。

日本のシェーブルチーズ

近頃では、日本でもシェーブルチーズのつくり手が増えました。フランスとどこか似て、同じ国でも北海道から沖縄まで季節の移ろいが異なり、自然環境も多種多様な日本。それぞれの風土のおいしさをたたえた山羊乳が採れ、食べ比べるのも一つのたのしみです。

ここからは、DEAN & DELUCAにシェーブルチーズを届けてくださるつくり手を紹介します。そのこだわりや想いと共に、この時期ならではのおいしさを堪能しませんか。


古株牧場 古株つや子さん

古株牧場 古株つや子さん

滋賀県竜王町の酪農一家に生まれ育った、古株つや子さん。北海道十勝でチーズづくりの基本を学び、単身フランスへ。ローヌ・アルプ、アルザス、コルシカなどの各地のチーズ農家に滞在し、気候風土を生かしたその日、そのときのミルクの状態を大切に。日本の牛や山羊に合わせたチーズづくりを行っています。

「やはり、ミルクを出してくれる牛や山羊の健康が大切です。毎日微妙に変化のある生乳の状態を見ながら、こちらの都合で工程を進めるのではなく、ミルクの動きに合わせてチーズをつくる。それが、結果としてよい味わいへとつながります。

古株牧場では、動物の堆肥は自社の田圃へ。育てた稲藁は餌へ。もみ殻は寝床に。そして、水は井戸水を用いて、循環型の農業を営んでいます。こうして育った牛や山羊のミルクは、まさに土地の恵みです。私の考えるおいしいチーズは、滋賀竜王町のテロワールを感じるもの。土地ならではの味わいを活かした、ここでしか醸せないものを目指しています。

機会があれば、どうぞ牧場へも遊びにいらしてください(古株さん)」

古株牧場/シェーブル
古株牧場/シェーブル

牧草の香りがしっかりとした酸凝固※タイプ。熟成するとトロトロに変化し、味わいは濃厚に、余韻も長くなる。

「フレッシュなときは蜂蜜などと合わせてほしいですが、アフィネ(完熟)になれば砕いたナッツと蜂蜜やオイルを混ぜてもらうと複雑味が増すので、それだけでスペシャリテになります。また、私の住んでいる土地は石灰系の土壌ではないので、骨格がしっかりしたワインよりも、生酛(きもと)づくりの日本酒など、乳酸発酵系のお酒と合わせるのがおすすめです(古株さん)」

※酸凝固
乳酸菌の酸の力でミルクを固め、酵母の力でゆっくり時間をかけて熟成させる製法で、シンプルな味わい。
古株つや子
古株牧場|KOKABU BOKUJYO
滋賀県竜王町で半世紀以上に渡り親しまれている牧場で、自社で採れるミルクを使い、チーズやバターを始め、お菓子やケーキ、ジェラートなどもつくる。中でも、古株さんのナチュラルチーズは、国産チーズの大会で金賞を受賞するなど、注目を集めている。


ボスケソ・チーズラボ 是本健介さん

ボスケソ・チーズラボ

長野県佐久市で、長野らしいチーズを開発しようと取り組む是本健介さんは、福岡県出身の元HONDA F1チームの空力エンジニア。HONDA在籍中にチーズプロフェッショナルの資格を取得。チーズを通して、おいしさを届けることはもちろん、地域の人々の健やかな毎日や、里山の環境保全も目指しています。

「人は、すばらしい環境の中では脳内でおいしさを増幅して感じるといわれています。ですから、食材に心配ごとがないのはもちろん、どういう環境で、誰と、何と一緒に食べるかが『おいしい』に大きく影響を与えると思います。

弊社で使用する山羊乳は、市内にある国の研究機関の牧場から供給してもらっています。必ず乳成分を確認して、自ら集乳し、なるべく振動を与えないよう運転にも気を付けて輸送します。そして、ラボに到着したら時間をおかずに殺菌・製造。というのも、シェーブルチーズは牛のチーズよりも、生乳の品質に大きく影響を受けるといわれているからです。

おいしいチーズには、つくり手のあくなき探求心が欠かせません。だから毎日、真剣勝負です(是本さん)」

ボスケソ・チーズラボ/TENRAI(テンライ)
ボスケソ・チーズラボ/TENRAI(テンライ)

酸凝固タイプのチーズを、塩と酵母で熟成。中心部の酸味と、外側の旨味、塩味、山羊乳特有の爽やかな香りのバランスがよい。季節ごとに、山羊の食べる草でもまた違った味わいに。

「香りが大きな特徴なので、お召し上がりになるときは30分くらい前に冷蔵庫から出して常温に。シェーブルチーズは香草との相性がよいので、同様の香り成分を持った白ワイン、とくにソービニヨン・ブランとのペアリングがおすすめです。また、魚の中でもとくにスモークした魚と香りが融合すると食欲を増します。スモークサーモンとディルとの組み合わせは抜群ですよ(是本さん)」

ボスケソ・チーズラボ

ボスケソ・チーズラボ|BOSQUESO CHEESE LABO

2016年12月に開店。スペイン語の「Bosque(ボスケ)=森」と「Queso(ケソ)=チーズ」を組み合わせた造語。欧州のチーズづくりを基本に、地元の日本酒蔵の蔵付き乳酸菌や温泉水を利用。ミルクを生み出す動物の力を利用し、里山の保全も目指す。現在、牛と山羊のチーズ15種類ほどを手掛ける。


リトル・グリーク・キッチン パメラ・アンさん

リトル・グリーク・キッチン

沖縄県沖縄市に、ショップ兼チーズ工房を構えるアメリカ出身のパメラ・アンさん。10年前、ギリシャから沖縄に移住した当初は読谷村でギリシャレストランを営んでいましたが、チーズのおいしさが評判を呼び、1年前、現在の場所へ。その味わいは、2018年の「ジャパン・チーズ ・アワード」銀賞など、様々な賞も受賞しています。

「私は、誰でも食べられるものこそおいしい、本物だと思っています。私が使っている山羊乳は、40年近く試行錯誤を繰り返した生産者さんがたどり着いた、おいしい飲みやすい味わいのミルク。私は世界中の山羊乳を知っていますが、おいしい山羊乳を作るのは至難の業。亜熱帯の沖縄ではおいしい山羊乳づくりは難しいといわれているので、その生産者さんとの出会いはミラクルでした。現在は、そのミルクを大切に、無添加でチーズをつくっています。

もう一つ大切にしているのは、動物の命です。植物由来の自然の菌だけを使い、ベジタリアンも召し上がれる、持続可能なチーズづくりをしていきたいのです。つくれる品数も量も限られますが、だからこそ納得のいくおいしさになるとも考えています。 私のシェーブルチーズは、みんなが食べられるやさしい味。山羊のミルクや加工品には独特のクセがあると思っている方にも食べていただけたら(パメラさん)」

チーザニスタ /山羊チーズ
チーザニスタ /山羊チーズ

沖縄県産の山羊乳のみを使用した、酸凝固タイプ。白く柔らかいモールドチーズをベースに、沖縄県産の塩を少し加えている。

「出来立ては、まるでブリーチーズのような口どけです。初めてシェーブルチーズを食べる方にも食べていただきやすいよう、トライ&エラーを繰り返しました。まずは常温でたのしんで。冷蔵庫に入れるとパルメザンのようになるので、削ってパスタにかけても。オーブンで焼いて、蜂蜜とドライイチジクや杏を細かく切り、砕いたナッツとバゲットにのせるのもおいしい。お酒は、春らしい白ワインやロゼと合いますよ(パメラさん)」

パメラ・アン

チーザニスタ|Cheeseanista

沖縄県沖縄市にあるショッピングセンターにある、パメラ・アンさんの営むショップ兼チーズ工房。沖縄県産の牛のミルクを使ったチーズやヨーグルトを販売。ギリシャから直輸入のチーズに合わせたいおいしいワインやオリーブオイルも取り扱っている。

今回、お話を伺ったつくり手の皆さんは、土地で育つ山羊のミルクをとても大切に。自分たちの手と目が届く範囲で、一つひとつ丁寧にチーズづくりをされています。

もし、運命のひと口に出会いたいと考えているのなら。土地の恵みを生かして、その土地、その工房にしかできない味わいを目指しているつくり手のものを召し上がってみてはいかがでしょうか。

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