想いをつなげる
2024.08.23
白磁の白、鉄釉の黒、美しい形。温かく包み込むような笑顔と併せ持つ、内に秘めた審美的ストイックさが魅力の吉田直嗣さん。富士山の麓、森と風の中に佇む吉田さんの工房を訪ねました。
白と黒。美しいうつわのかたち
様々な見せ方つくり方がある中で、「かたち」が好き。
空間としてのうつわの「かたち」を研ぎ澄ますために色とテクスチャーを抑えた表現にしています。
吉田さんがうつわを作りはじめた最初の5年間は、黒い陶器だけを作っていたのだそうです。友人と紅茶のイベントを行っていく中で、紅茶の色を美しく見せるうつわが必要になったことを機に白磁のうつわを作り始め、そのすばらしさの虜に。これが、吉田さんが白と黒の器をつくる始まりとなりました。
内と外。空間を意味づけるうつわ
うつわの内側は人の手が届かない、食べものが入る場所。
外側は人の手が触れる場所で、うつわを感じ測っている。
食器とは、古くは祭事に使う器具でした。普段の食事も命をつなぐ尊い行為だと思うと、うつわの大切さを感じます。食べることは生をつなぐと同時に、他の命をいただくことでもあります。生と死、どちらとも捉えられるあいまいさを空間で区切り意味づけるのが、うつわの役割なのかもしれません。
吉田さんの作品には内側(裏)が黒く、外側(表)が白になったものがあり、繊細な口縁部はまさにその境界線。内と外、2つの概念を込め表現されたのが吉田さんのうつわなのです。
楽しみ方は使い手の思うままに
作家は自分がつくれる限界まで美しく作る。
使い方や結果に良し悪しはなく、すべては使い手の思うままに。
うつわを愛でる「静」、料理を盛り付けいただく「動」。うつわのある暮らしは「静」と「動」ふたつの世界をドラマティックに行き来します。つくり手の想いが込められたものは、日々変わっていく驚きと発見を与えてくれます。
吉田さんは言います。作家は自分ができる限界まで研ぎ澄まし美しく作る。使い手は思うままに盛り付ける。そこに正しい方法や結果の良し悪しはない、と。 その時の気分や自分なりの工夫を取り入れる心意気こそ、うつわのある暮らしを楽しむ秘訣なのですね。