GALLERY
はたらく器、おいしい皿。
ひとつの土鍋で味わう、
おいしさのひろがり
「アヒージョをつくる鍋をつくりたい」という
つくり手の想いからつくられた小さな土鍋。
キッチンでつくりあげる鍋ではなく、
お酒を片手にテーブルの上でつまみをつくりあげていくような小さなもの。
できあがったものを温かいまま鍋からつまむ。
気負った料理ではなく、冷蔵庫にあるもので
じっくり火を通して味わうおいしさ。
そんなゆったりとした時間のうつわです。
はたらくうつわとしてのかたち
この土鍋は、普段の吉田さんのうつわとは土が異なり
耐火の土でできたもの。
しっとりしたスミクロの釉薬に
ざらっとした素地のコントラスト。
厚みはあるけれど、重すぎない程よい重量感。
吉田さんは、この土鍋をつくるとき
食材にゆっくり火が入るような
おいしさを引き出す厚みやかたちをイメージしてつくられました。
たったひとつの目跡
蓋を開けてみると、土鍋の縁に6つのざらざらした跡・・・
それが目跡(めあと)。
蓋と本体を一緒に焼きあげる際、互いの釉薬でくっつかないように
小さく丸めた粘土の粒を間にかませたときにつく跡です。
鍋全体の色なじみを一緒にしたいという作家からの想いであり、
この目跡はひとつとして同じモノがない景色をつくりだします。
使い込むほどに育っていく、世界にひとつだけのしるしです。
DIRECTOR
つくり手から使い手へ
日々のうつわを伝える
北海道生まれ。神奈川県鎌倉市在住。
うつわ祥見 KAMAKURA 代表。
2002年鎌倉の高台に「うつわ祥見」をオープン。ごはんのうつわ展、めし碗展など、食べる道具の美しさを伝えるテーマ性のある器の展覧会を国内外で開く。
著書に『うつわを愛する』(河出書房新社) 『うつくしいうつわ』(ADP)など多数。
utsuwa-shoken.com
TABERUにはbeがある。
存在と未来。
わたしたちの生きるを支えるもの。
器は食べる道具。
吉田直嗣さんは静岡県の富士山の麓の美しい場所で作陶をされています。洗練された美しいフォルムのうつわに大変人気があり、ギャラリーとして毎年個展を開催させていただいております。作家とは自らの美の物差しを作品を通じて世の中に問うことができる人だと思いますが、吉田さんは流行にとらわれない確かな作家性がある作り手のひとりです。
さて、そんな吉田さんがご自分のために作られたうつわが、今回ご紹介する耐熱シリーズ。ずっと以前に自宅で使うために耐熱の土で、直接火にかけられるうつわを作っているとお聞きしたことがあり、彼が作る耐熱のうつわに興味を抱いていました。そもそも、陶芸を始めたきっかけも自分の感性に合ううつわがないことに気づいたからということなのですから、今回の耐熱シリーズの誕生の秘話も理解できるのです。使う人に媚びることなく掘り下げていく作陶の姿勢を今回もしっかりお伝えできるのではないかと思います。ほかでは手に入らない「吉田直嗣の土鍋」。この度、”はたらく器おいしい皿2024”の第一弾としてご紹介できることは大きな喜びです。
祥見知生(うつわ祥見 KAMAKURA)