旬をたのしむ
清々しく、おめでたい新たな年の始まりに。一年を、元気でしあわせに過ごせますようにという願いを込めて愛される「おいしい」が、それぞれの国や地域にあります。
今回ご紹介するのは、日本の元旦に親しまれる「大福茶(おぶくちゃ)」です。これは、新年の朝に初めて汲む水「若水※」で淹れたお茶に、梅干しや昆布などを入れて飲む風習です。旧年中の邪気を払い、新たな年の無病息災と福を願います。
一説によると、その始まりは京の町。951年(天暦5年)に疫病が流行した際、地元の人々から信頼を集めていた六波羅蜜寺の空也上人が、梅干しを添えたお茶を施しました。その後、疫病は鎮まり、これにあやかった村上天皇が元旦にお茶を飲むようになったため「王服茶」と呼ばれるように。転じて「大福茶」として、庶民にも浸透していったそうです。
- ※若水(わかみず)
- 新年に初めて汲む水で、これを飲むと1年の邪気が祓えるといわれています。別名「初水」「福水」といい、年神さまに供えたり、お雑煮をつくったり、お茶をたてたりします。
一杯に込められた意味
今や、お正月の訪れを感じるお茶としても親しまれている「大福茶」。入れる具材は、地域により微妙に異なりますが、主なものはこのような顔ぶれです。それぞれに意味や願いがあります。
梅干し
「うめ」という発音が「産め」に通づると「子孫繁栄」の願いが込められています。また、その見た目から「しわができるまで夫婦仲よく」という意味も。
昆布
昔からお祝いごとに欠かせない食材の一つです。「よろこ(ん)ぶ」という言葉から、縁起がよいと考えられています。ちなみに、かつて昆布は「広布(ひろめ)」と記されていました。これは末広がりの形が由来。「よろこ(ん)ぶ」と「広布」から連想される「広める」から、昆布巻きは「喜びを広める」ものとして大事にされています。
黒豆
おせち料理にも使われる黒豆。「まめ」という言葉には、昔から「真面目」「丈夫」といった意味があります。「まめに働く」「元気に暮らせるように」という願いが込められています。
山椒
山椒の葉は香りが強いため、庭に植えると鬼や邪気が嫌い「魔除け」になると考えられてきました。実が房状に実ることから「子孫繁栄」の意味もあります。
ぶぶ(はぜた玄米)
「祝い花」とも呼ばれる、炒ってはぜた玄米(もしくは白米)です。関西では、お茶漬けの具材としても親しまれています。香ばしい風味が加わります。
「大福茶」の煎れ方
より一層おいしくいただくためにも、お茶の基本と煎れ方のコツを押さえましょう。
日本茶をたのしむポイント
茶葉
新鮮さが大切です。長く置くと、香り・味ともに落ちるので、開封してから早めに飲み切ります。
水
汲みたての水道水、または軟水をしっかり沸騰させます。空気を含んだミネラル分の少ない水が、お茶の風味や香りを引き出します。また、沸騰した手の湯は温度が高すぎるので、一度茶器に入れるなどして、温度を下げてから急須に入れます。
道具
蓋付きの急須は揃えたい道具です。茶葉をきちんと対流させ、開かせることが重要です。また、最適な温度でお茶をいただくために、あらかじめ茶器を温めておきましょう。
時間
茶葉の旨みや香りを引き出すために、適した抽出時間があります。次の「おいしい分量」を参考におたのしみください。
「大福茶」のおいしい分量と煎れ方
ここでは、DEAN & DELUCAがおすすめする分量と煎れ方をご紹介します。香り高く、豊かな味わいのお茶で、健康と幸福を願いませんか。
-
材料
- 煎茶の茶葉 5g
- お水100cc
- 梅干し1個
- 結び昆布1〜3個
<用意する道具>
- 急須、湯呑み(あればタイマー)
- おすすめの分量
-
- 茶葉の量・・・5g
- 湯の温度・・・80度
- 湯の量・・・・100cc
- 浸出時間・・・40秒〜1分
-
煎れ方
- 急須に分量の茶葉を入れる。
- 急須に湯を注ぎ、浸出させる。
- 梅干し1粒、結び昆布1〜3個を湯呑みに入れる。
- ③の湯呑みにお茶を注ぐ。