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seasonal旬をたのしむ

世界で愛されるイタリア料理とパスタ

2021.10.15
イタリア料理

イタリア料理は、食材から調理法まで、私たちの日常にすっかりなじんでいます。世界中で多くの人を虜にするその食文化には、どのようなバックグラウンドがあるのでしょう。また、中でも欠かすことができないパスタには、どのような種類や特徴があるのでしょうか。そのルーツや特徴を、巡ってみたいと思います。

風土と家庭が育むごちそう

イタリアのマップ

​そもそも、イタリア国が統一されたのは、およそ150年前。それまでは、各地に都市国家が形成され、異なる文化や生活習慣を持っていました。もちろん、風土と切っても切り離せない食文化もそう。

イタリアの国土は、5つの海に囲まれた長靴のような形です。南北に長く、各地域で地形や気候が異なり、特産物も料理の特徴も違います。

たとえば、北部はアルプス山脈やポー河一帯の平野が広がり、寒暖の差が激しい地域。米や小麦、肉、乳製品などを使った濃厚な味の料理が特徴です。一方、一年中温暖な気候の南部では、野菜や海産物にオリーブオイルを使うシンプルな味付けが一般的です。 ​

イタリアの風土とパスタの歴史

クリーム系パスタ
北部で愛されるクリーム系パスタ

​ 南北での違いは、イタリアの食の代表格であるパスタにも表れています。

パスタの歴史は、12世紀頃のイタリアで、生パスタの原型が誕生したことから始まります。その後、シチリア島にアラブ人から乾燥パスタが伝わり、硬質小麦の栽培に適した南部では、乾燥パスタが浸透していきました。しかし、その技術は北部へは伝わらず、北部では軟質小麦と卵でつくる手打ちの生パスタが主流でした。

18世紀以降は乾燥パスタの工業化が進み、大量生産されるようになります。また、工房では職人の器用な手先とアイデアで、遊び心のある形のパスタが誕生。さらに、北部の手打ちパスタは、家庭の味として受け継がれていきました。

こうして各土地で様々なパスタが生まれ、地域で採れる食材を使ったパスタ料理が家庭ごとにつくられるように。北部では、クリームやラグー系の濃厚なもの。南部では、トマトやオリーブオイルを主体にしたパスタ料理が、よく食されています。

もともと地域色が強いイタリア料理は、どれも素朴で気取らないのも特徴です。それは、パスタの歴史からもわかるように、土地で育てられた食材を使った家庭でつくられた料理が、郷土料理となっているから。イタリアのごちそうが、世界中で多くの人に愛されている所以は、ここにあるのかもしれません。 ​


土地の恵みを召し上がれ

イタリアの食材

​ 「パスタ」とひと口に言っても、種類は豊富です。それぞれに、つくられる土地の風土や人々の食文化も練り込まれ、育まれてきました。太さや形状、味わいなどの特徴に合わせてソースと組み合わせれば、より一層おいしく味わえます。ここからは、地域ごとに愛されるパスタの種類と特徴をご紹介しましょう。 ​


エミリア=ロマーニャ

イタリア共和国北東部に位置する地域。州都のボローニャは、日本でも愛されるひき肉をトマトやワインと煮込む「ボロネーゼ」発祥の地でもあり、美食の町としても知られます。

タリアテッレ
イタリア語で「切る」という意味の、約1cm幅の細長いリボン状平打ちパスタ。この「卵パスタ」は、エミリア=ロマーニャ州が発祥です。クリームソースやミートソースなど、濃厚な味わいと相性よし。

ファルファローネ
イタリア語で「蝶々たち」という意味をもつ、蝶の形のショート卵パスタ。生クリーム、バター、パルミジャーノ・レジャーノなど乳製品を使うソースにおすすめ。

トスカーナ

イタリア共和国の中部。州都のフィレンツェは、イタリア・ルネッサンスの中心になった街です。険しい山脈、海、オリーブ畑やブドウ園と、多様な自然に恵まれています。

ピチ
イトスカーナ州シエナの名物で、手で丸く捏ねる太麺パスタ。強力粉、塩、水、オリーブオイルでつくる、もちもちとした歯応えが食べごたえ抜群。ミートソース、トリュフソースなどの濃厚なものと相性がよいです。

バッカーリ
直径25〜30mmほどの、筒状になったリングパスタ。肉たっぷりのラグーソース、クリームソースなどと。筒の中にも旨味が入り込み、ソースがしっかり絡みます。

パッパルデッレ
トスカーナ州では定番の平打ちリボン状パスタ。「豪快に食べる」「食いしん坊」を意味する「パッパーレ」が語源です。牛豚肉のラグーソースにペコリーノチーズをたっぷり擦り下ろす食べ方がおすすめ。

タッコーニ
「靴のかかと」を意味する、フリル状にひだの入った四角いパスタ。ひだにソースが絡みやすいので、クリーム系など味の濃いソースや、チーズをたっぷりのせてオーブン焼き、またビーフシチューに添えても。

カンパニア

イタリア共和国南部に位置。カンツォーネ、ピッツァといえばここです。水牛のモッツァレラチーズが名物として知られます。

リングイネ
南部でよく食される乾燥パスタで、平たい楕円形のロングパスタ。ツルツル、もちもちとした食感で、オイルとよく絡み、バジリコソースや魚介類とは定番の組み合わせです。

スパゲッティ
日本でパスタといえばこれと言えるほどメジャー。そもそも「パスタ」は、イタリア語で「小麦粉を練り、製造した食品」を指します。「スパゲッティ」はパスタの中でも、小麦粉を練って棒状に細長くしたもの。オイル系やトマトを使ったさっぱりとしたソースとよく合います。


ヴェネト

イタリア共和国北東部に位置するエリアで、水の都としても知られるヴェネツィアのある州です。海と山の幸が堪能でき、塩漬けのタラなど独特の食文化も。

カネッティ ディ リゾ
卵を使用する米粉のパスタ。米粉特有の、甘みともっちり感があります。チーズやきのこをふんだんに使ったクリーム系ソースと一緒にどうぞ。


プーリア

イタリア共和国南西部に位置し、対岸はギリシャ、クロアチアへと続く海が広がります。特にオリーブ、オリーブオイルがおいしいことでも知られ、生産もイタリア国内第1位なのだとか。

オリキエッテ
耳たぶのような形が特徴で、主に手打ちでつくられるショートパスタです。もちもちとした食感で、本場ではニンニクとアンチョビをきかせたオイル系のソースでたのしまれることも。サラダやスープに加えるのもおすすめ。

アブルッツォ

イタリア共和国中部に位置する、自然豊かなエリアです。伝統的な味わいを守り続ける料理が数多くあります。また、スルモーナという町のコンフィエッティ(砂糖菓子)が有名。

キタッラ
「ギター」という意味の、アブルッツォ州の伝統的なロングパスタです。楽器のような器具でつくる断面は正方形で、他にはない食感がたのしめます。ラグーソースに絡めてどうぞ。

フェットチーネ
「薄切り」という意味のイタリア語が語源。幅が4〜8mmほどの、平打ちパスタです。タリアテッレと似ていますが、タリアテッレがイタリア北部で、中部〜南部ではこのフェットチーネが食されています。「リガーテ」という溝の入ったタイプもあり、クリーム系やラグーソースと。

とても身近な食材であるパスタ。そこには、海や山に囲まれたそれぞれの地域で育まれた、伝統的な製法や地域に根付いた食材、多彩な食文化がありました。それぞれの生まれた場所や個性を知ると、もっとおいしく、もっとたのしんでいただけるはずです。

手軽に本格的なパスタを

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