つくるたのしみ

食後に甘いものを食べながら、尽きぬ会話を心ゆくまでたのしむ。世界各地で親しまれるデザートタイムの中でも、数々のスイーツ発祥の地・フランスでは“二度のおいしい時間”を過ごします。
まずは、「デセール(dessert)」の時間。フランス料理の最後に出てくるデザートを「デセール」と言い、そのもっとも大きな特徴はつくりたてを味わうこと。焼きたてのクレープに冷たいアイスクリームを添えたり、季節の果物にホイップしたての生クリームを添えたり。つくりたてのフレッシュ感やライブ感をたのしみます。
- 「お好みの温かい飲み物を添えて」。温かいフレーバードティーなら、一層香り豊かなひと時に
次に、淹れたての紅茶やコーヒーとともに焼き菓子をつまむ時間。サブレやフィナンシェなどを食べながら、充実した時間に幕をひきます。
国内外でさまざまなお菓子に出逢ってきた菓子研究家・福田里香さんも、そんな素敵な時間を知る一人です。
- 菓子研究家の福田里香さん
「フランスを訪れて驚いたのが、乳製品の豊富さです。生クリーム、バター、チーズなど、乳製品がとてもおいしい。
中でも思い出に残っているのは『クープ(coupe)』というデザートです。あれは5月頃、南仏を旅行したときのこと。ふと入ったカフェでメニューを見たら、『coupe』とだけ書かれていて。当時はその名を知らず、どんなデザートかも想像がつかなかったのですが、興味が湧いて頼んでみました。
すると出てきたのは、熟れたいちごがゴロゴロのったグラスに、泡立てた生クリームをのせただけのデザート。見た目はとてもシンプルでしたが、ひと口食べたらおいしさに感激して。フランスには“GARIGUETTE(ガリゲット)”という有名な品種があるのですが、ガリゲットに似た細長い形のいちごだったかな。
おいしさのポイントは、旬の果物を使うこと。生クリームは脂肪分が40%ぐらいのものを使ってますが、ホワイトチョコレートの代わりにお好みで水切りヨーグルトやフロマージュフレなどを混ぜてもおいしいです」
Coupe aux Fraises いちごのセミニョンクラシック仕立て
生クリームをたっぷり使いながらも、いちごソースや爽やかなレモンの酸味で、後味はさっぱり。果物のみずみずしさも手伝い、すいすい食べられます。
「私はパフェも好きですが、シンプルなクープ派。年々複雑化する華麗なパフェはお店で。クープはホームメイドがいいと思っています。今回のクレームシャンティイは、ホワイトチョコレートを溶かし込んだバニラガナッシュクリームです。やわらかく泡立てると舌触りが滑らかです」
-
材料(2人分)
- 苺
(へたを取り2粒は縦2等分、
4粒は縦に4等分)12粒 - レモン1/4個
- グラニュー糖2つまみ
【ガナッシュクリーム】
(作りやすい分量。絞り袋に入れて3日冷蔵保管可)- 生クリーム
(脂肪分40%位のもの)200ml - 塩1つまみ
- ホワイトチョコレート
(カカオ分28~32%のもの)120g - バニラビーンズ
(縦に半分にカット)1/2本
- 苺
-
「ガナッシュクリーム」のつくり方
- 鍋に生クリームとバニラビーンズを入れ、弱火にかける。65~70℃まで上げ、蓋をして30分おく。
- バニラビーンズを取り出し、包丁で中の種をこそぎだし、種を鍋の生クリームに戻す。再度弱火にかけ、60~70℃まで上げ、ボウルに入れたホワイトチョコの中に流し込む。
- 少し置き、ゴムベラで溶かし混ぜ、仕上げに泡だて器でしっかりと混ぜる。 一晩落としラップをして冷蔵庫で休ませる。
- 休ませたものをハンドミキサーで泡立てる。星形の金口の絞り袋に入れ、冷蔵保管
仕上げ
- 苺6粒をレモン汁適量、グラニュー糖と一緒にミキサーで滑らかに回し、苺ソースを作る。
- グラスに苺ソースを4/5流し、その上にガナッシュクリームを適量絞る。
- 4等分の苺をのせ。再度ガナッシュクリームを絞る。
- 縦2等分の苺をのせ、残りの苺ソースをかけ、レモンの皮を削りかける。
- 色とりどりの「プティ・ディアマン」。「シンプルなものでも豆皿でも、お好きな小皿に盛り付けるのもおすすめです」
食後にクープで口の中をリフレッシュ。さらに、温かな紅茶にひと口サイズの ディアマン を添えて、もうひと息。余韻の長いデザートタイムを過ごしてみませんか。

- 福田里香|Fukuda Ricca
- 福岡生まれ。菓子研究家。書籍や雑誌、onlineに掲載するレシピ提供に始まり、現在は食にまつわるモノ・コトのディレクションを手掛ける。