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people想いをつなげる

ふたつとないものを求め、つくり続ける『さの萬』

2024.09.18
さの萬

四季折々の気候風土とつくり手が育む、さまざまな食材。その中でも「肉」という食材には、生産者、シャルキュティエ、熟成士、料理屋など、多彩な目利きがいます。また「肉」とひと口にいっても、扱う種類やおいしさの極め方はそれぞれ。

個性豊かな彼らに共通するのは、日々の食卓を彩る “とっておき” の食材を、信念をもち追及しているということ。そして、肉に並々ならぬ愛情をもち、お客様にしあわせな時間も一緒に届けているということです。

バイヤーが各地へ赴く中で培ってきた、数々の出会い。今回は、お客様が感動するおいしさを届ける肉匠『さの萬』をご紹介します。

Interview

さの萬 佐野佳治さん

さの萬
『さの萬』代表の佐野佳治さん(写真中央)

富士山の麓で1914年に創業し、3世代。土地に根差し、世界中の肉フリークからも信頼を集める『さの萬』。

「私どもの信条は、 “不二求心(ふじきゅうしん)” 。つまり “ふたつとないものを、求める心” です。私どもの生き方と考え方を、商品を通してお客様にお伝えしています」とは、代表をつとめる佐野佳治さん。

富士宮に生まれ育ち、この街を愛してやまない佐野さんは、みずからを「田舎の小さな肉店」といいます。一方で、業界に先駆けたトレーサビリティーの確立、日本初のBBQセットの開発・販売、オリジナル豚「萬幻豚(まんげんとん)」の開発、日本で初めてのドライエイジングビーフの確立など。これまでにない本物のおいしさを追及し、お客様によろこびを届けています。

初代から多くの取り組みで知られる『さの萬』ですが、共通するのは “よい素材” を大切にすること。

「私は食べることが好きで、中学生の頃から食べ歩きをたのしんでいました。今も、国内外へ足を伸ばしています。研究もありますが、一人の人間としておいしいものを食べたい。だから私どもがつくるものも、胸を張って『おいしい』と言えることは当然。私が納得しなければお店に出しません。

『おいしい』にはさまざまありますが、まずは大勢の人に支持される圧倒的な味わい。それにはよい素材であることは欠かせません。私どもの扱うお肉は素材ですから、そのものがよくないと。そして、調味料一つまで、徹底して本物を使うことを大切にしています」

  • さの萬「萬幻豚」
  • さの萬「萬幻豚」

佐野さんの確固たる想いから生まれた一つが「萬幻豚(まんげんとん)」です。甘みのある脂の食べ心地は軽やかで、肉には味がしっかりとのったオリジナル豚を独自に開発しました。

「祖父の口ぐせは、『牛を見るな、人を見よ』。よいエサと育て方にこだわり、さらに健康でおいしい豚づくりをされる柳瀬政士さんを鹿児島からさの萬にお迎えして、萬幻豚は生まれました。

日本でおいしい肉というと、有名な品種であることが先行します。でも私は、それだけではないと思っていて。エサ、飼育方法、体型などによっても味わいは変わります。

萬幻豚の場合、まずは生体の状態で選別します。肉にしたときにおいしいのは、尻尾が太い、エラがはっているなど、肝っ玉母さんのようながっちり体型です。

そこから一般的には約180日間かけて育てるところ、萬幻豚は約200日間以上かけて、じっくりと飼育します。すでに大人の豚ですから、もうあまり太りません。しかし不思議なことに、この期間が豚本来の旨みを育て、さっぱりとした脂に変わってゆくんです」


さの萬「萬幻豚」
命をいただいていることを自覚し、大切に扱う

さらに出荷にもこだわります。肉にさばくため屠畜場へ運ぶとき、どうしても生体にストレスがかかり、肉質に影響が出るそうです。そこで萬幻豚は、屠畜場へ運んだら約1日かけて安静にして肉にします。

「私どもは、すべての食べ物は命の連鎖の中に存在していること。そして、つくる苦労や、食べることの本質も伝えたい。だからこそ、心ある方法を大切にしたいんです」


さの萬「ドライエイジングビーフ」
肉がずらりと並ぶ熟成庫

もう一つ、『さの萬』といえば「ドライエイジングビーフ(乾燥熟成された牛肉)」です。2006年から開発を始め、2008年に販売開始。2年間、試行錯誤しました。

「牛肉は寝かせるとおいしくなるというのは、皆さんご存知の通り。私どもも、1ヶ月ぐらい冷蔵庫の中に枝肉を吊るしておいたりもしました。でもやはり、ドライエイジングに勝る方法はない。

強い風と湿度コントロールにより、表面を乾燥させて熟成させるので、余分な水分がとび、赤身肉の旨みと香りが内側に凝縮されます。また、肉質は柔らかでジューシーになる。さらに、ドライエイジングビーフならではの香りがもたらされ、“more tender” “flavor” “taste and texture” の三拍子が実現されるのです。

品種もいろいろ試しましたが、赤身肉をよりおいしくする技術だと思います。だから私どもは、国産のホルスタインで去勢されたオス。なおかつ、一般的なものより長く飼育されている牛を使います。

開発でもっとも苦労したのは、熟成庫の環境づくりですね。枝肉を1本入れるだけでは思うような環境にならず、ある程度の本数を入れ、時間をかけることで環境が仕上がってゆきました。

この方法では、庫内にいる特定された微生物がタンパク質を分解し、旨味アミノ酸を増やして、独特の熟成香もつけてくれることがわかっています。ドライエイジングは肉に付加価値を与えてくれるんです」


  • さの萬
  • さの萬方

110年という歴史の中で培ってきた技術、数々のロングセラーがありながらも、それに甘んじることなく新しいおいしさをお届けしてゆきたいと佐野さん。最後に、今後について伺いました。

「商品を一つつくったから、それで最終章じゃないですね。完成したものもつねに磨き続け、新しいことにもどんどん目を向けてゆく。これからも自分たちのおいしいを信じて、お客様に支持していただけるようなものづくりに取り組んでいければと思います」


さの萬
さの萬
創業から110年。芳醇な香りと肉本来の旨みが広がる「富士山麓熟成肉 ドライエイジングビーフ」、さっぱりとした脂で旨みが強い「萬幻豚」などを、肉匠が独自に開発。唯一無二を取りそろえる。
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