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people想いをつなげる

ストーリーも食卓へ届ける『ふくどめ小牧場』

2024.02.29

素材本来のおいしさを大切に。土地ならではの、世界に一つの味わいを生み出すつくり手との出会いは宝ものです。

近年は、本場で学んだ日本のシェフやつくり手との巡り合いも増えました。共通するのは、レシピや製法のみならず、現地で大切にされている“こころ”まで持ち帰っていること。そして、自分たちの地元に合う方法で実践していること。彼らは、会得した物事を地域や土地に合うようアレンジすることで、世界に一つのオリジナルを生み出しています。

今回は、そんな出会いの一つをご紹介します。取材を通して、これからも「おいしい」をよろこび続けるために、大切にしたいことが見えてきました。

Interview

ふくどめ小牧場 福留洋一さん

農畜産業が盛んな鹿児島県鹿屋市で、父親の代から養豚場を営む『ふくどめ小牧場』。その名の通り、家族中心の小規模なつくり手ながら、日本でここにしかない品種の「サドルバック」と「幸福豚(こうふくとん)」を飼育し、その加工・販売まで手がけています。

「自分たちで責任をもって加工できるだけ」と、常に育てるのは全部で10〜15頭

福留洋一さんは、3人兄妹の次男で、子どもの頃から豚に接して育ちました。高校卒業後、イギリスとドイツへ。ドイツの国家資格であるマイスターを取得し、2011年に帰国。現在は、主に加工を担当しています。

「イギリスで語学を学んだあと、ヘルマンスドルフという、ドイツ国内でも昔ながらの製法を大切にしているオーガニックな村の工房に入りました。日本では肉屋とハム屋は別ですが、ドイツではと殺から加工・販売まで一貫して行います。つまり、一頭丸ごとを育てて売る。お肉も血も内臓も余すことなく使います。現地へ行き、僕ら家族が『ふくどめ小牧場』でやりたいのは、この命をすべていただく方法だと感じました」

豚を、愛情をかけて育て、命がなくなる瞬間も見届け、おいしく加工し、食卓に届ける。一頭一頭に目と手をかけるドイツの方法は、まさにふくどめ小牧場が描く姿。洋一さんは帰国後、家族と相談し、飼育は父と兄、加工は洋一さん、そして広報や販売は妹が中心となる、現在のかたちへシフト。

工房には、たっぷり陽光の入る大きな窓を設置

ふくどめ小牧場では、ドイツにならって工房もガラス張りにし、販売所の隣に設置。お客さまにも豚の解体から加工まで、作業が見えるようになっています。

「日本は工房に窓がないところが多いのですが、働く人の心に少しでも光がそそぐように。そして、お客さまにも学びや気づきになったらと思っています。僕たちは、命をいただくことで生きているのですから」

目の前のおいしさには一つひとつ命があって、その命をいただくことで私たちは生きている。常に意識し続けるのは難しいかもしれませんが、おいしさの背景にあるストーリーを知ってもらえたら、と続けます。

洋一さんの畑は、牧場の隣にある。ちょっとした野菜も栽培

現在、ハーブや香味野菜などを自家菜園で育て、余計な添加物などを加えないオリジナルのシーズニングもつくる洋一さん。今後は、地域循環にも挑戦してみたいとのこと。

「ドイツでは、工房のある村に、チーズやビールの工房、パン屋、幼稚園もあって、それらの間で循環していました。廃棄物が出ないだけでなく、地域に雇用も生み出せます。僕らも、顔の見える人たちが取り組むものから出る廃棄物を活用したり、雇用が生み出せたらと思い描いています。たとえば、チーズやビールの工房をつくって、ホエーやビールのホップカスを豚の資料にするとか」

そのうえで、お肉そのもののクオリティをさらに上げ、新たなつくり方にもチャレンジしていきたい、とも。

「本場で学んだ伝統的なつくり方にも挑戦したいです。味が今より力強くなるし、添加物も使用しないから、お肉の味わいをよりしっかり感じていただけるものになるはず。僕は、ドイツで学んだすべてをここに合うかたちで実践したいんです」

大切に育てた豚を、丁寧に加工して「おいしい」のはふつう。その背景まで含めて「おいしい」と感じてもらえたら、と洋一さん。食べること、生きるということは、命をいただくこと。今日の心とおなかを満たすしあわせに想いを馳せてみると、また違ったひと時が過ごせるかもしれません。


ふくどめ小牧場
オランダで養豚を学んだ長男・俊明さんが、日本唯一の希少な豚種「サドルバック」と「幸福豚」を飼育。ドイツのビオ食肉業界を牽引する牧場『Herrmannsdorfer』で7年間ハム・ソーセージ加工の修業をし、国家資格であるマイスターを取得した次男・洋一さんがシャクータリーに仕上げている。

『ふくどめ小牧場』の味わいをご自宅で


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