“知る”から始まる未来『ファインド・ニューズ 髙野 済氏』

食材を知り、本物を知り、土地を知る。国内外のつくり手の方々に共通するのは、自分たちの手がけるおいしさの源を知り尽くしているところです。だからこそ、唯一無二の味わいを長年つくり続けられるのでしょう。

そんな、世界に一つを生み出すつくり手との出会いは宝ものです。近年は、本場で学んだつくり手とのご縁も増えました。共通するのは、レシピのみならず、現地で大切にされている“こころ”まで持ち帰っていること。そして、自分たちの地元に合う方法で実践していること。彼らは、会得した物事を地域や土地に合うようアレンジすることで、オリジナルを生み出しています。

ここからは、そんな出会いの一つをご紹介します。

大分県大分市の『ファインド・ニューズ』は、DEAN & DELUCAのバジルペーストを手がけるつくり手です。地元の契約農家が化学肥料などを使わず育てた新鮮なバジルを使い、オリジナル商品を始め、メーカーやお店の商品開発も行っています。

バジル、塩、オリーブオイルを基本に、必要に応じて松の実やニンニクなどを加えた、シンプルなペースト。そのフレッシュで豊かな香りと美しいグリーンに、本場イタリアを知るバイヤーも心を奪われ、共に取り組むことになりました。

配合のベースは、本場イタリアで“ジェノベーゼ発祥の店”として知られる『ゼッフィリーノ』オーナーシェフ直伝。代表・髙野 済さんが自らレストランを尋ねて授けてもらったそうです。

「もちろん、そう簡単には教えてくれませんよ（笑）。体を張ってアタックした結果『ジェノバのものでなければジェノベーゼとは言えない。でも今回、特別にレシピを教えてあげよう』と、3つのレシピを教えてくれたのです。それを基本に、日本に合わせて塩味を調整するなどしています」

「おいしさのために何より大切」という、原料となるバジルも、大分の土地にあったスウィートバジルの種を選ぶところから始めたそうです。また、栽培に適した畑も、沿岸部と山間部ならイタリアのような山間部のほうが向いているなど、調査・研究。ともすると、ファインド・ニューズ＝おいしいバジルの専門家かと思いきや、それだけにとどまりません。

ハーブや植物を育て、その栄養や薬効効果をデータベースに構築し、バジルペーストなどの食品やコスメを開発・製造。近年では、日本各地でサスティナブルな仕組みづくりのアドバイスやサポートを行うなど、知見を活かした幅広い事業を展開しています。

「僕が幼少期にアレルギー症状をハーブに助けられたこともあって、創業当時はハーブや植物の力を活かした薬をつくりたかったのです。だからバジルペーストでも、レシピはもちろん、何より大切にしているのは、原材料のバジルを酸化させないこと。体のためにも、フレッシュなものを口にするのが大切です」

現在、力を入れている事業の一つが、全国各地での循環型農業への取り組み。ファインド・ニューズは指導にまわり、その土地ごとの特色を活かしたサイクルづくりをサポートしています。

「僕らが蓄積してきたレシピや手法、知識などは、若手にどんどん授けていきたいと考えています。だから、ブログなどでデータも公開する。今後は、日本各地のお困りごとを巻き込み、地域循環を生む方法をその土地の人たちと探っていきたいと思っています。

たとえば、国産オリーブ。オリーブを育て、オイルも絞っている地域のつくり手と共に商品開発をして、ボトルもご当地の陶器を活かしてつくっています。また、沖縄のサトウキビのカスをベースにした栽培システムを考えたりもしています。地域にあるものを活かし、捨てなくていい工夫にもチャレンジしていきたいですね」

「おいしい」の未来がこれからも明るくあるために。自分たちにできることに惜しみなく力を注ぐ。ファインド・ニューズが日本各地でまく種が、どのように花開いていくのか、期待が高まります。