想いをつなげる
つくり手との出会いを大切に。私たちは、食のセレクトショップとして、まるでレストランのような本格的な味わいを気軽に味わっていただきたいと、様々なレストランやシェフと共に商品づくりにも取り組んでいます。その一人が『アンティカ・オステリア・カルネヤ』(以下『カルネヤ』)の長沼剛司シェフです。
- キ笑顔が印象的な長沼剛司シェフ。
東京・神楽坂にある『カルネヤ』は、イタリア語で“肉”を意味する“カルネヤ”が名の通り、お肉料理を堪能できるお店です。気さくな雰囲気ながら「熟成肉の走り」ともいわれる人気店で、熟成牛をはじめ、豚、鶏、羊、ジビエなど、様々なお肉を、イタリア料理を軸に、フレンチ、和食、中華といった、幅広いスタイルで提供しています。
自身がシェフを務めるお店を「お肉はもちろん、パスタ料理もおいしい店だと僕は思う。僕のパスタはおいしいと自負しているので」と、人懐っこく笑う長沼シェフ。
ここからは『カルネヤ』の味わいを支える長沼シェフにインタビュー。お客さまの笑顔を生むために大切にしていることや、こだわりなどを伺います。
INTERVIEW
また帰ってきたくなる味がある
『カルネヤ』は、浅草の老舗焼肉屋で生まれ育ち、渡伊してイタリアンの腕を磨いた高山いさ巳シェフがオーナーを務めるお店です。高山シェフは、週に6日、焼肉を食べて育った生粋のお肉のプロフェッショナル。現在は、信頼する長沼シェフに『カルネヤ』を一任し、自身の新店で腕を振っています。
- 厨房からは、客席の様子が覗ける。「お客さまの笑顔や「おいしい」が身近な空間で働けることがうれしい」と長沼シェフ。
長沼シェフは、以前働いていたイタリア料理店で高山シェフと出会い、縁あって『カルネヤ』の厨房に立つように。料理に目覚めた原点は、仲間からの言葉だったそうです。
「高校3年間、ファミリーレストランでアルバイトをしていたのですが、まかないづくりで『君の料理が一番おいしい』と言われるのがうれしくて。卒業後は、早くひとり立ちしたくて、料理の道へ進もうと決めました。
“ひとり立ち”“料理”というキーワードで選んだ先が寿司屋で、働きながら調理師の免許を取りました。3年ほど働いて地元に帰って、また寿司屋に入ったのですが、ある日見たルネッサンス期のイタリア彫刻に衝撃を受けて。サン・ピエトロ大聖堂をつくった方のものだったのですが、何これ! 格好いい! と痺れましたね。『これからはイタリアをやろう!』と」
その後、高山シェフとの出会いの場となった、東京・南青山のイタリアンへ入店。10年働いたのち、ローマで半年ほど働き『カルネヤ』へ。今では高山シェフの味わいとマインドを継ぎ、新メニューの開発も手掛けています。
「新しいレシピを考える時、最終的には『カルネヤ』のマネージャーにも相談してアドバイスをもらったら加えますが、基本的には一人で考えます。絶対にブレたくないのは、食材をおいしく料理すること。お客さまがお店に何をしにいらしているかって、おいしいものを食べにですから。
そのためには、食材選びも、おいしいがいちばん。中でも、牛肉のこだわりはひとしおです。高山シェフが長く付き合っている熟成牛のつくり手さんを大事に。通常は40日ぐらいで仕上げる熟成期間を『カルネヤ』で使用するものは3ヶ月ほど見ています。これにより、成熟した熟成香が生まれて、ナッツやチーズ、とりわけゴルゴンゾーラのような風味が出て、焼いた時の香ばしさがぐんと変わるんです。ほかの食材は、紹介や、飛び込みでの出会いなど、最適なものをいろいろなルートから選んでいます。
あとは、お肉は季節感がありませんから、合わせる野菜や前菜、パスタ料理などで季節感を出せるように意識しています。旬の食材を使いつつ『少しずつ寒くなってきたから牛ほほ肉の赤ワイン煮込みが食べたいな』とか『ニョッキもいいな』とか、気分も大事にしたいですね」
また、ずっと変わらない看メニューも大切にしているそうです。たとえば『カルネヤのオールスターズ』。熟成牛をはじめ、豚、鶏、ラムという顔ぶれで構成された、お肉の旨味を詰め込んだ一皿です。
「変わらないってことは、食べたいお客さまがいるという証です。僕自身、食べに行くレストランが決まっているように、一度食べておいしかったら、またその味に帰りたくなりますよね。だから大筋は変えず、付け合わせやアクセントで季節感を出して、繰り返し食べてもたのしめるようにしているんです」
評判のお店のシェフを引き継いだからこそ、期待に応える味を提供し続けなければならない。ある意味、とても険しい道を「おいしいことがいちばん」というシンプルな信念で進み続ける長沼シェフの言葉からは、食するたのしみでも忘れてはならない“芯”を感じます。
心地よい親近感のあるお店
「おいしい」のためには柔軟に。日頃から、食するお客さまが主役のお店づくりも大切にしているのだとか。
「例えば『○○が食べたい』とか『こういう味付けはある?』とか、お肉の焼き加減とか、リクエストがあれば応えます。こだわりがないと言われれば、そうかもしれませんね。でも、僕は食べたい人のために料理をしているから。
もちろん、若い頃は『こう食べろ!』みたいな熱さもありましたよ(笑)。でも『カルネヤ』に入ってから柔軟になったと思います。高山さんもマネージャーも頭が柔らかいので、その影響もありますね。ここは“イタリア料理”のお店だけれど、イタリア料理だけではない。お肉をたのしんでいただける料理という料理を出す、というスタンスなんです」
- 温かなライトに照らされた店内。一人で、大切な誰かと、それぞれの人がそれぞれの時を、心地よく過ごせる空気が流れている。
もう一つ、大切にしているのはお料理以外の要素。お店の雰囲気や接客も、おいしい記憶に欠かせないといいます。
「中でも親近感、フレンドリーであることは大事だと思いますね。『カルネヤ』の接客は、友人と接するみたいな感じ。だからか、心身ともにリラックスしていただけるんじゃないでしょうか。いくら味のいいレストランでも、緊張しながらではきっと味の記憶は残りません。うちは小さなお店ですし、朗らかな雰囲気で、伸び伸びと過ごしていただけたらいいですね」
シェフが、お客さまの気分とおなかを大切に。笑顔で味わってもらえたらと、自身も笑顔で腕を振るうお料理。それを、大切な誰か。たとえば「おいしい」の感性や、飲み食いするテンポが同じ人と分かち合えたら、いっそう幸福なひと時が生まれるに違いありません。
「僕自身、おいしいものを食べると、今日も生きていてよかったと感じます。だから、今日も明日も、変わらず『カルネヤ』で、誰かの『おいしい』がつくれるように精進します」
- 長沼剛司|TSUYOSHI NAGANUMA
- 1983年、埼玉県出身。18歳から3年間、寿司屋で働く。南青山『イル・パッチォコーネ』での修業中に『アンティカ・オステリア・カルネヤ』のオーナーである高山氏とマネージャー・塚本氏に誘われ、シェフを務めることに。『アンティカ・オステリア・カルネヤ』は、塚本氏が高山シェフの味に惚れ込み2007年10月10日にオープン。現在は、長沼シェフが、メインシェフとして厨房に立つ。
『アンティカ・オステリア・カルネヤ』の味わいをご自宅で
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アンティカ・オステリア・カルネヤ牛ほほ肉の赤ワイン煮込みソース 200g1,728
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アンティカ・オステリア・カルネヤサルシッチャのトマトソース 200g1,361