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act私たちにできること

未来へのバトン

2021.06.02
未来へのバトン

四季があり、様々な気候風土に恵まれた島国の日本。中でも瀬戸内海地方は、海と山、両方の幸がとれる豊かな地域です。DEAN & DELUCA(ディーン & デルーカ)は、日本での創業当時から、瀬戸内海地方の多くのつくり手と繋がり、行き来してきました。とりわけ小豆島周辺は、美しい海、温暖な気候、そしてオリーブの産地と、DEAN & DELUCAのルーツがある地中海地方ともよく似ています。

このような環境を守るためにも、2020年7月から取り組んでいるのがレジ袋の有料化です。お客さまにマイバッグをご持参いただき、ごみになるレジ袋の削減につながりました。また、レジ袋をご購入いただいた収益は、共感するところへ寄付することに。。

今回のストーリーは、この寄付先となる『瀬戸内オリーブ基金』について。過去を学びとして、荒廃した環境を蘇らせ、未来に繋ごうと生まれたNPO団体です。地域住民と共に取り組むその活動について、伺いました。

  • 瀬戸内オリーブ基金
    瀬戸内オリーブ基金

    1990年代、日本最大規模といわれた有害産業廃棄物不法投棄事件「豊島(てしま)事件」をきっかけに、建築家の安藤忠雄氏と、豊島事件弁護団長の中坊公平氏が呼びかけ人となり、設立。2000年、公害調停成立を機に設立されて以来、瀬戸内海地方の美しい自然環境を守り、再生することを目的に活動している。

INTERVIEW

世代を超えたふるさと再生

海と山に囲まれた豊島(てしま)

海と山に囲まれた豊島(てしま)

D瀬戸内オリーブ基金は、豊島住民が示した「美しいふるさとを次の世代に渡したい」という願いを、豊島だけではなく、瀬戸内の地域全体で実現するために設立されました。その目的は、かつての緑あふれる自然を取り戻すため、瀬戸内海一帯の環境保護活動を行う人々を助成するというもの。ボランティア活動を“する”ためではなく、活動する人たちを“応援する”ために生まれたNPO団体です。

「地元の力で持続可能な未来をつくるという趣旨のもと、設立してすぐ、全国各地から多くの寄付が集まりました。それをもとに、豊島の玄関口である家浦港の近くや、廃棄物の不法投棄により破壊された国立公園の近接地にオリーブの樹を植え始めたのが、現在も続く緑化活動のルーツです。

  • 作業風景
  • 作業風景

その活動の一つが、2014年から瀬戸内オリーブ基金が独自の活動として取り組んでいる『豊島・ゆたかなふるさとプロジェクト』。これは、廃棄物の不法投棄によって荒廃した瀬戸内海国立公園一帯の植生を、ふさわしい状態まで自然回復するよう手助けをしながら見守る、息の長いプロジェクトです。

土地に合った樹木が成長できる環境を整えたり、苗木を植えたりしています。苗木には、オリーブを中心に、地域ごとの土地に合った樹木を選定。活動は、企業ボランティアや土壌の専門家などの協力を得ながら、地元の小中学生も参加して行われています。

「たとえば、岡山大学に協力してもらい、豊島に咲くコバノミツバツツジの苗木を、地元の小学生が育てて植樹しています。昔から、豊島でお花見といえばコバノミツバツツジだったそうです。それぐらい地元では親しまれていますが、種がとても小さくて、育てるのが難しい。そこで、岡山大学に種から苗木にしていただき、それを一年間、地元の小学校に預けて毎日水やりをしてもらいます。そして一年後、荒廃地に植えるんです。この植樹の際、豊島事件についても学びます」


小さな子どもも収穫に参加
小さな子どもも収穫に参加

結んだ実を味わって応援する

オリーブ畑の管理

オリーブ畑の管理は、地元住民と事務局スタッフで行う

植樹されたオリーブの苗木は、植えたら終わりではありません。人の手によって、毎日丁寧に管理する必要があります。

現在、瀬戸内オリーブ基金では、地元住民の協力のもと、植樹された約600本のオリーブを管理。その面積は、約1ha。年に平均すると、3トンほどの実が収穫できるようになったそうです。収穫した実は、自分たちで搾油。つくったオリーブオイルで、オリジナル商品の開発・販売も手掛けています。

「乾燥した風通しのよい土地を好むオリーブは、専門知識に基づく管理をしなければ、病気になったり、枯れたりします。地元住民の方と事務局スタッフで香川県のオリーブ栽培指導を受け、植樹から10年経ったころから、ようやく安定して実を収穫できるようになりました」


搾油機からオリーブオイルが出てきた瞬間
搾油機からオリーブオイルが出てきた瞬間は、やはりよろこびもひとしお

2014年から、食用オリーブオイルづくりをスタート。小豆島のつくり手に教わり、専用の機械を購入。豊島で、事務局スタッフと住民が搾油しています。また、2018年からは、オリーブオイル由来の石鹸や美容オイルも開発・販売。こちらは、活動に共感した関西の企業が協力しているそうです。

「事務局スタッフに加え、オリーブを育てるのは、主に島のかた3人。収穫は、10人くらいで1ヶ月ほどかけて行います。搾油は2〜3人で。無事に実が収穫できて、搾油機からその年初めてのオリーブオイルが出てくると、毎年ほっとします」


オリジナル商品の食用オリーブオイル
オリジナル商品の食用オリーブオイル

商品は、オンラインストアや地元の土産物屋で販売しています。その価格は、エキストラバージンオイルの場合、200mlで¥4,320。純粋な国産品としては必ずしも高くありませんが、海外製品と比べるとどうしても高額に。

「品質は、香川県のお墨付きです。ただ、オリーブ畑の面積が狭いため大量生産はできず、この価格でも採算ラインはぎりぎり。天候不順などにより収穫量が少ないと、赤字になります。この規模のオリーブ栽培で、大きな利益を上げることは難しいのです。それでも、瀬戸内オリーブ基金がオリーブオイルをつくって販売することは、意味があると考えています。なぜなら、販売を通じて、瀬戸内オリーブ基金の活動や豊島事件のことを知っていただけるからです。ただし、赤字続きでは持続できません。持続可能なオリーブオイルの生産のため、収穫量をもっと増やすこと、もっとたくさん購入していただけるように販路を確立することが課題です」

活動を知ってもらう、一つのきっかけになればという思いも込められたオリジナル商品。買う側は、おいしく食べたり、生活に取り入れたりすることで応援できます。直接、植樹などのボランティア活動に参加できなくとも、関われる。方法は、一つではありません。

輪をたのしみながら広げる

  • 輪をたのしみながら広げる
  • 輪をたのしみながら広げる

現在、世界中で問題になっている大量の海洋ごみ。瀬戸内海でも、海岸に大量のプラスチックごみが漂着し、地引網漁では大量の海底ごみが引き揚げられます。そこで、瀬戸内オリーブ基金では、瀬戸内海を守る活動への助成にも力を入れています。また、基金独自のプロジェクトとして『ゆたかな海プロジェクト』も展開。

「瀬戸内海には、イルカの一種であるスナメリが生息しています。彼らが安心できる環境を残すためにも、美しい海を取り戻したい。そこで、この瀬戸内海エリアを中心に活動する環境団体などと協力して、環境学習会や海岸清掃などの『ゆたかな海プロジェクト』を行っています。

このプロジェクトで、大事にしていることが2つあります。一つ目は、たのしむこと。たとえば、清掃活動にはごみに点数をつけて、拾ったごみの点数をチームで競う『スポーツごみ拾い』という遊びを取り入れています。これが、ゲーム感覚で、大人も思わず夢中になってしまう。つらい活動は長続きしません。たのしみながら、活動を広げていくことが大切だと思います。

二つ目が、協力すること。瀬戸内海エリアには、海に関心を持つ環境団体は多い。それぞれがよい活動をするのも素晴らしいですが、みんなで力を合わせれば、より大きな活動ができると考えています。ですから、繋がって、大きな輪になることも大事にしています」

ボランティア活動からイメージされる姿を、前向きに。そして、一人の声や力は小さくとも、手を繋ぎ、協力して大きなものにしていく。困難を困難と思わせない明るさに、共感を覚えます。

収穫風景
晴れ間も多い瀬戸内海地域は、すがすがしく、風土に恵まれたエリア

「私たちとしても、DEAN & DELUCAが大切にする“食”は、人間にとって基本的で大事なことだと考えています。よい食材は、よい環境がなければつくることができません。人々がこのまま生活スタイルを変えようとしなければ、気候変動はますます厳しいものになります。やがては、おいしいオリーブオイルが食べられなくなるかもしれません。持続可能な未来をつくっていくことは、食の未来にとっても大事だと思います」

これからも「おいしい」をよろこび続けるために、両者で何ができるのか。ここから共に探していきたいと思います。

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