プロダクトデザイナー・柴田文江さん 前編

DEAN & DELUCA 2020.06.05

VOICE 想いをつなげる

プロダクトデザイナー・柴田文江さん

前編

DEAN & DELUCAで使用している、ホットドリンクのテイクアウト用カップ。このプラスチック製のフタ(リッド)に代わるものを、私たちは模索しています。その一歩として、飲み口のない紙製のフタをテスト導入することにしました。

選択したのは、プロダクトデザイナー・柴田文江さんの作品「スタッキングペーパーリッド」です。ふだんはエレクトロニクス商品や日用雑貨など、工業デザインの世界でご活躍の柴田さん。このフタを考案・発表したのは2006年の「竹尾ペーパーショウ」。1965年から続く、紙の展覧会です。3次元での表現が難しい素材の紙に、最初は戸惑いもあったそう。でも、重ねた紙コップの姿をきっかけに、ぴたりと収まる洗練されたフタが生まれました。

そして、このたびお待ちかねの製品化。DEAN & DELUCAとの取り組みで、お客さまに体験していただくことに。このテスト導入を前に、生みの親である柴田さんを訪ねました。

CREATOR INTERVIEW


“当たり前”がないことで、立ち返る

2003年から、DEAN & DELUCAではテイクアウト用の紙製カップに、飲み口のついたプラスチック製のフタを導入しています。持ち帰りしやすく機密性も高く、飲食店や街などで、今や見慣れた姿です。

ドリンクを持ち帰る場合は、紙とプラスチックがワンセット。それが“当たり前”と、多くの人が思っていました。でも、柴田さんとしては、その“当たり前”に違和感のようなものを覚えていたそうです。

「これを考えた2006年は、(テイクアウト用の紙製カップに)フタをつけるっていうこと自体が新しかったんです。さらに、フタから飲むスタイルは新鮮で、わざわざ紙製のカップにプラスチック製のフタっていうのも贅沢感みたいなものがありました。

一方で、素材が違うから分別する必要があったり、その際に手や服が汚れることがあったり、ごみ箱のお掃除をする方が分別してくださることもあると聞いて……。なんだか大変だな、と思って、考えはじめたんですよね。環境のことも手助けできたらとは思っていたけど、今よりもうちょっと、緊張感はなかったかもしれません」

当時、現在の海洋汚染に繋がっているとされる「マイクロプラスチック」という言葉は、まだ知られていませんでした。でも、フタを紙にすれば、そのまま可燃ごみのボックスへ捨てられる。つまり、手間がなく、気分もいいと、柴田さんは考えたのです。

さらに、柴田さんはデザインの原点にも立ち返りました。単純に、素材を替えるだけでいいのだろうか。それでは、未来がないんじゃないか。

そうしてできあがったのは、内側にフタが収まるかたち。コップの内側に小さいコップを重ねるような設計です。これなら、持ち歩いてもこぼれにくく、かつ外すときもスムーズ。また、保管スペースも少なくてすみます。

さらに、飲み口があるものとないものを考案しました。「これは、私からのメッセージ」と柴田さんはいいます。

「今回、製品化するのは飲み口がないほう。フタをはずして飲んでもらいたくって。

そもそも、コーヒーは香りも楽しむものですし、今はいろんな種類もあって、中にはとってもデリケートなものもあるでしょう。だからフタをはずして飲むと、より一層おいしいと思うんですよね。一方で、買って持ち帰りたいとなったら、フタをしたい。そういう時に必要な機能性を備えたフタがあればいいなって。

今までは付け加えていくことがサービス、みたいなところがあったように思うけど、これからは、適切にそいでくっていうのもあると思うんですよね。全員が全員、使わなくちゃいけない。フタをするのが“当たり前”じゃなくて、いらない人は『いらない』と言えることもサービス。

だって、そもそもごみが出ないことがうれしいじゃないですか。過剰に包装されたものはあけるまでに萎えちゃうし、アイスドリンクには必ずストローがついてるけど、ストローがなくても飲めるし、紙ストローは、余計にコストがかかるとも聞きました。それに、直接ゴクリと喉越しを味わうのもおいしいですよね。

提供する側もサービスを受ける側も、必要をジャッジする。それが今、大切なように思います」

この、小さな紙製のフタが、新しい価値観に気がつくきっかけになるといい。当たり前の思い込みを崩す、ある種の違和感を考えるチャンスにしたい、とも。

「環境問題について真剣に考える人が増えたいま、この存在を、サービスの受け手も納得してくれると思うんですよ。これまでは、機能性やコストパフォーマンスを求めてきたけれど、どうしたら続けられるのか。未来に想いを巡らす機会が増えてきた、というか」

消費者から生活者へ。サービスの受け手が、自らのスタイルや価値観を、消費を通じて示しはじめた。そして、環境問題がより身近になっているいまだから、紙製のフタは本当の理解を得られるのかもしれない、と続けます。

「私はプロダクトデザインが専門だから、プラスチックのよさも十分理解しています。フタの密封性でいえば、プラスチックのほうが高い。でも、紙の弱点をみんなが気にして、工夫しながら使っていける世の中になりつつあるんじゃないでしょうか。『大丈夫、大丈夫。そこは気にして飲みますから』って。ある種、完璧でない物事を体験することで、大らかに受け止められるようになってほしいんですよね。

私含め、みんなの協力や理解があると、環境に対する解決策って、少し違う答えが出せるようになっていくと思う。その追い風にのって、サービスの提供者である企業やお店も、勇気あるメッセージを出してくれたらいいですね」

柴田 文江
FUMIE SHIBATA

プロダクトデザイナー。Design Studio S代表。エレクトロニクス製品から、文具、家具、食器、ホテルなど、生活に関わるデザインを軸に活動している。 http://www.design-ss.com/

STACKING PAPER LID
地球のことを考えた紙製のフタで「おいしい」を

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販売期間
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取扱店舗
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丸の内 / 青山 / BMW GROUP TERRACE/ 大手町メトロピア
対象商品
アーリーバードブレンド トライアルペーパーリッド
価格
¥320