PATISSIER INTERVIEW
ラ・ヴィエイユ・フランス
東京・千歳烏山

DEAN & DELUCAは、食の美しさがもたらす豊かさ、食する喜びをお伝えするセレクトショップ。伝統と革新、時代と空間の壁を越え、なお人々に愛されていく “定番商品” を地道に選び、つくり手とお客様の橋渡し役となることをミッションと捉えています。

『ラ・ヴィエイユ・フランス』は、そんな想いを共有して長いお付き合いを重ねてきたパティスリーの一店。DEAN & DELUCAとの出逢いは10年前。オーナーシェフ、木村成克さんのフランス菓子に対するリスペクト、伝統製法を忠実に守りつつ、オリジナリティを追及するスタイルと高い技術力、そして何よりつくり手としての人となりに、バイヤーが感銘を受けたのが始まりでした。スイーツのみならず、コンフィチュール類やガトー・サレ(甘くない塩味の菓子)まで幅広く揃える商品構成は、DEAN & DELUCAが目指す “Artisanal grocers(職人型食料品店)” そのものでもあります。

今回は、千歳烏山にあるパティスリー本店を訪ね、木村シェフから見たフランス菓子の魅力、パティシエという仕事、誇り、夢などについて語っていただきました。

ラ・ヴィエイユ・フランス
木村成克シェフ

渡仏後、数点の洋菓子屋に勤務し、パリの老舗店「LA VIEILLE FRANCE(ラ・ヴィエイユ・フランス)」のオーナー、ルネ・エルマベシエール氏から本格的なフランスの伝統菓子を学ぶ。2007年、千歳烏山に「ラ・ヴィエイユ・フランス」をオープン。2012年には、グラシエ(アイスクリーム)を中心に扱う「ラ・ヴィエイユ・フランス」仙川店をオープン。

STORY
人生を豊かにする
フランス菓子の魔法

木とレンガの質感を生かし、ブラウンを基調にまとめた温かみのある店内。地元の人々だけでなく、遠くからはるばる足を運ぶファンも多いそう。

パリの老舗パティスリーの
エスプリを受け継いで

── 古木の柱や梁、レンガを使ったアンティーク風の内装が素敵ですね。落ち着きがあって、温かみにあふれていて。日本ではなく、まるでフランスのお店に来たようです。

お客様からも、よくそんなふうに言っていただきます。店名の『ラ・ヴィエイユ・フランス』も、“古き懐かしきフランス” という意味なんですよ。私が修業し、後にシェフパティシエを任されたパリ6区の老舗パティスリーの名前でもあります。派手さはないけれど、流行り廃りに流されないフランス菓子の粋を体現したような店で。師匠のルネ・エルマベシエールからは、お菓子作りの技術だけでなく、背景にある文化への理解、店づくりに必要な視点、職人としての心構えなど、パティシエとして生きるために大切なすべてを学びました。自分の店を同じ名前にしたのは、そんな恩師へのオマージュでもあるのです。

壁一面にジャムやコンフィチュール、コンポートの瓶詰が並ぶ眺めは圧巻!ミルクジャム、リュバーブやオニオンなど果物以外のバリエーションも充実。キュートなボトルデザインにも注目です。

スイーツだけに留まらない
幅広さがフランス流

── お店に入ると、まず壁いっぱいに並浮ぶ瓶詰のコンフィチュールに圧倒されます。フルーツだけでなく、野菜の酢漬けやオイル漬けまで!焼き菓子も、スイーツ以外のサレ菓子が充実しています。日本では、あまり見られない光景ですよね。

フランスらしさと言っていいと思います。パティスリーといえば甘いお菓子だけでなく、パンや惣菜、瓶ものも一緒に並んでいるのが現地流ですからね。もっとも、コンフィチュールに関しては、1軒目に修業したアルザスのパティスリーの影響が強いかもしれません。

── ストラスブールの『ネゲル』ですね。

1927年創業の老舗ながら、家族経営の小さなパティスリーです。四季を通じて自然が豊かで、旬の食材に恵まれていて。フランスに来て初めての修業先だったこともあって、ここでも本当に多くの学びがありました。鮮度のよい素材を吟味して選ぶことの大切さ。それらを加工して保存食に仕立てる技と創造性。手をかけて丁寧に調理することの意味。そして、「ケーキ屋で甘くないものを売っていいんだ!」という単純な驚きと(笑)。もともと食べること、料理全般が好きなこともあって、自分で店を持つなら同じようなスタイルでいきたいという思いにつながりました。

オイル漬けや塩水漬け、酢漬けなど、旬の野菜を使った “トレトゥール(お惣菜)” 系の瓶詰めも。ワインのおつまみに、メインの付け合わせに、あれこれ試したくなる逸品ぞろい。

ブリック・オ・ショコラ・バナンヌ(左)は、今春デビューの新作オリジナル。アルザス修業時代の思い出がいっぱいつまったエコセ(右)は、店のフラッグシップともいえるお菓子のひとつ。

クラシカルで新しさもある
シグネチャースイーツ

── そんな『ラ・ヴィエイユ・フランス』で、シェフにとっての “シグネチャースイーツ” とは? 特に、初めての方ぜひ食べていただきたい、こだわりの焼き菓子、生菓子を1品ずつ教えてください。

焼き菓子「エコセ」

フランスのアルザス地方の伝統菓子です。ココア&メレンゲ入りの生地と、クリーム色のバターケーキとの2層をなす、シンプルな美しさのパウンドケーキ。当店のエコセは、先お話ししたストラスブールの『ネゲル』直伝のルセット。スポンジ生地にはキルシュを含ませ、V字型に薄くバタークリームをしのばせて、見た目よりも大人っぽい味わいに仕立てています。表面には、アーモンドクランチをたっぷりまぶして、香ばしく。今も交友がある『ネゲル』のシェフも、「うん、この味だ!」と太鼓判を推してくれています。

生菓子「ブリック・オ・ショコラ・バナンヌ」

生菓子には、今期からの新作を。カカオ分が68%と高いヴァローナ社の “バリ” を使用したチョコレートムースの下に、バナナ、オレンジ、レモンのコンポートを組み合わせています。カカオ豆は、ネーミングのとおりインドネシアのバリ島産。それ自体にフルーティーなアロマがあり、苦みの輪郭もしっかり立っているため、トロピカルなフルーツの酸味と相性ぴたり。見た目は濃厚ですが、熟したバナナの甘やかな香りや柑橘系の爽やかさが感じられ、夏場でもさっぱりと食べられますよ。

木村成克シェフ。パティシエのみならず、ショコラティエ(チョコレート職人)やグラシエ(アイスクリーム職人)としての腕にも定評があります。

── どちらも、おいしそうですね。説明を伺っていると、本当に心からお菓子が好きでいらっしゃるのが伝わってきます。シェフは、そもそも、なぜパティシエを目指そうと思われたのですか?

父親が製菓職人だったことが大きいかもしれません。自分が子供の頃は大阪のホテルで洋菓子を作っていて、家に持って帰ってくるアイスクリームやケーキを食べて育ちました。貧乏だったけれど、おいしいお菓子には恵まれていた。そんな“食育”が効いて、自然と父親と同じ道を志すようになったのだと思います(笑)。

── いろいろなお菓子がある中で、なぜフランス菓子を?

まず、小さい頃から漠然と外国に対する憧れがありましたね。3才のときは、「青い目の女の子と結婚するんだ」と宣言していたらしいです(笑)。当時は日本で洋菓子といえばスイス、ドイツ、オーストリアが主流でしたが、自分の場合は20歳の頃からポール・ボキューズのパティスリーで働くようになって。そのうちフランス修業のお話をいただくご縁があって、自然とフランス菓子を極めたいと思うようになりました。

千歳烏山本店のショーケース。伝統的なルセットによる定番のフランス菓子から、創意工夫が光るシェフオリジナルまで、幅広いスイーツが並びます。

基本を守ってこその
オリジナリティ

── フランスでの修業は通算11年半に及んだと伺っています。本場にいたからこそ体感できたこと、現在のシェフの店にも引き継がれているフランス伝統菓子の本質とは?

フランスの師匠たちから共通して学んだのは、基本を大切にすること。小手先の流行や技を追うのではなく、正調のルセットで、きっちり丁寧に手をかけて作る。この土台が揺らいでいると、人を感動させるお菓子にはなりません。だから、自分の作るお菓子でも、あえて日本風のアレンジを加えることはしたくない。新しい商品を考えるときは、「フランス人が食べて、おいしいと言ってくれるかどうか」を、いつも頭の片隅に置いています。

── 一方で “ブリック・オ・ショコラ・バナンヌ” をいただくと、伝統を踏まえながらも、木村流のオリジナリティを打ち出されているのが、わかります。

学んだことをグレードアップさせる考え方ですね。アレンジして形を変えてしまうのとは違う。たとえば、一つのお菓子の中で2種類以上のフレーバーの組み合わせを考えるとき。チョコレートとバナナ、フランボワーズとピスタチオといった、いわゆる王道の組み合わせがあります。私は “鴨ネギ” と呼んでいるのですが(笑)。かたや、チョコレートとカシス、紅茶とアンズのような、サプライズ系の合わせ方もある。和菓子でいえば “いちご大福” みたいな、ね。アイスクリームやマカロンのフィリング、ジャムの材料でも同じこと。ベースがきちっと作られていれば、フレーバーで遊んでもスタイルがブレることはなく、むしろ二乗のおいしさを発見することにつながります。

ショーケースの対面は、ダコワーズやクッキー、ガレット、サブレなどのガトー・セックがぎっしり並ぶ焼き菓子コーナー。別の一角には甘くないサレ菓子を集めたコーナーも。

パティシエを目指す
すべての人に伝えたいこと

── 第一線のパティシエとして腕を奮うだけでなく、若手の育成にも力を入れていらっしゃいますね。後進の皆さんに、一番伝えたいと思うのは、どんなことでしょうか。

手先の技術ばかりを磨くのではなく、心をこめること。心をこめて、生産者の顔が見える安全な食材を選ぶ。栽培や届けられるまでの苦労に思いを馳せながら、心をこめて加工する。そうした心遣いと想像力がなければ、フランス菓子の基本である素材の目利きの技術も身につきません。そして、自分のお菓子について絶えず考え、より高みを目指すこと。24時間考えたっていい。もちろん、簡単なことではありません。でも、「これで十分と思ったら、お終いだぞ」と、いつも言っています。

季節のフルーツを使ったさまざまな焼きタルトやアントルメの豊富さも、パリのパティスリーさながら。ちょっとした手土産や記念日のスイーツに、気分が上がる華やかさ。

お菓子は
人生に彩りと喜びをもたらす

── 最後に、木村シェフにとって、お菓子とは? この先の夢や展望についても、お聞かせください。

お菓子は人生を豊かにしてくれるもの。自分の場合は、とりわけ人とのつながりで、言葉にできないほどの宝物をもらいました。恩師の教えや思い出はもちろん、『ネゲル』ファミリーとの友情をはじめ、今もお菓子について熱く語り合える盟友に出会えたことは、本当に幸せなことだと思います。これからの夢は、スイーツ以外のトレトゥール(惣菜類)も拡充させながら、より思い描くパティスリーの理想に近づけていくこと。大それたビジョンは、ありません。これまでどおり、“一期一会” を大切にしながら、食べた人に喜んでいただけるフランス菓子を心をこめて作り続けたいと思っています。


ラ・ヴィエイユ・フランスのお菓子はDEAN & DELUCAの下記店舗で購入いただけます。

取扱店舗
マーケット店舗
六本木 / 品川 / 有楽町 / 恵比寿 / 広尾 / アトレ川崎 / ラゾーナ川崎
入荷日
毎週火曜、水曜、金曜、土曜、日曜の週5回、毎朝出来立てのケーキや焼き菓子が、お店にならびます。
※入荷日は予告なしに変更になる場合がございます

木村シェフのダコワーズをギフトに。

SUMMER GIFT 2019
パティシエが作る、2度美味しいひんやり夏のダコワーズ

SHOP INFORMATION

ラ・ヴィエイユ・フランス
千歳烏山本店

住所
〒157-0063
東京都世田谷区粕谷4丁目15-6
グランデュール千歳鳥1F
TEL
03-5314-3530
営業時間
10:00~19:30
定休日
毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
アクセス
京王線 千歳鳥山駅下車 徒歩8分

他のコラムを読む

  • パキーノトマトとスキャンピのリングイネ

    パキーノトマトとスキャンピのリングイネ

  • クロシェッティーのピスタチオソース

    クロシェッティーのピスタチオソース

  • ペンネのクルミソース

    ペンネのクルミソース